僕だけのプリマドンナ



なんで、私の所に来るかな……って思った。勉強を教えてくれ、って言ったけれど別にそこまで成績が悪かったわけでも、赤点取ったわけでも無い。ただ、彼よりも少しだけ点数が良かっただけだ。教科書と全員に配布された、模擬テストを彼と解いていた。学校の教室の片隅誰も居ない空間でコツコツと足音の様に鳴り響く、時計に目をやった。まだやり始めて十分と経っていない事に気が付いた。「名前、此処はどう解くんだ?」いつもよりも穏当な浪川君に対して、此処はこうして解くんだよ。ってお手本を見せる。それを真似て、式を書いていけば、答えに辿り着いた。「おぉ、すげェ!流石名前先生!」先生はくすぐったいな……って思いながらそうだ、と何か途轍もなく良い事を思いついたのだった。



それはこのクラスの同じチームメイトである、湾田君に教えを乞う事だった。湾田君は確か数学はいい点数取っていたはず。自慢げに私たちに見せつけていたから、知っているのだ。急いで鞄からスマホを取り出して、呼び出す。「あ、おい!何しているんだ?」「え、湾田君に教えて貰おうよ。私よりも点数高かったし、得意分野なんじゃないの?」って言うと、おい、やめろ。って止められたけど、もう湾田君が向こう側に居た。「はい、湾田です。って、名前じゃん?どうしたー?」「あ、おい!湾田!」「ん?その声、キャプテンも居るのか?何しているんだ?」湾田君の疑問も最もであるが、先程から会話を邪魔しようとして来るのでそれをよけながら、会話を続けた。「いや、浪川君に数学を教えてくれって言われて教室でおしえているんだけど、湾田君、今何処?」「あー。今日キャプテン居ないから、軽い練習で終わったから今教室向かっている所」「ナイスタイミングじゃん!よろしく!」「おい。待てって!!」「了解。後でな」そう言って、切れた。後はつーつーという虚しい音だけが響いていた。



数分後、湾田君がやってきた。そして、向かい合って勉強していた私たち(どっちかというと浪川君)を見て。「あー」とだけ言った。何を示しているのかわからなかったが「やっぱりやめるわ」とだけ言われて「はぁ?!」と怒ってしまった。何でさっきまでは良いって言っていたくせに!と彼を責めれば「いや、だって、キャプテンすげぇ目で睨んでくるんだもん、これ俺お邪魔虫って奴だろ?きっと、名前が適任って事だろう?」意味わからないって浪川君に目を向ければ確かに不貞腐れたように目を細めていて、ジト目で睨んでいた。何でそんな目をするのかわからなかった。教室に置きっぱなしにしていたのであろう、鞄を取って、帰ろうとするので引き留めた。「待ってよ!」



「だーかーら!本当にキャプテンが困っているなら、俺の方に来るでしょって。名前より、数学の点数いいのこの間の事で知っているんだから」確かに一理ある。「いい加減、キャプテンも告白したらいいんじゃねーの?名前って鈍いからさ、わかってねーみたいだぞ。じゃあな」そう言って湾田君はこの空間に爆弾を落としてから去って行った。告白って言うと。あの告白?と不思議そうに首を傾げて湾田君の居なくなった扉から浪川君へ目を向けると殺気を放っていた。「あの野郎!なんてこと言いやがるんだ……!」そう言って、追いかけて行った。よくわからないが、今日の数学教室はお開きってことだろう。湾田君と、浪川君の声がギャーギャー聞こえたが何を言っているかまでははっきりとは聞こえなかった。私も帰ろうかな。


Title 彗星

戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -