いつもと何ら変わらない気がする



帝国学園は恋愛禁止が掟。だから、この気持ちも容易く殺せるの。はぁ、と短い溜息を吐いて、サッカー部の話題でもちきりのこの教室で唯一交わらない私が居る。確かに恋愛は禁止だが、恋心を抱いてはいけないとまではいっていない。だからこそ、「佐久間君凄く格好いいよね〜、もう惚れても仕方ないよね」「鬼道君の方が格好いいし!あのマントとか、ゴーグルは奇抜だけど、司令塔なんてもう……痺れちゃう」「二人とも何言っているの?源田君でしょ、やっぱり!ゴールキーパーだから手も凄く大きくてあの手で包み込まれたら私……っ!」はあ、と二度目の溜息。この三人は、いつもこの話題でもちきりだ。いつも自分の好きな男子を惜しげもなく言い合っている。そんな素直さに羨ましいな、と少し苦笑いした後机に伏せた。



放課後、掃除のゴミ投げで最後までの居残りが決まった。源田君は……私の想い人だ。だけど、この思いを告げようとかそんな馬鹿げたことを思ったことはない。源田君の選手生命にも関わる事なのだから。源田君は大きな両手で、ゴミ袋を抱えて、焼却炉にそれを投げ込んだ。燃えないごみは別の場所に捨てる。「帝国は恋愛禁止だが思うだけならただだもんな……」不意にそんなことを零した源田君を見やる。ああ、あの女子たちの会話を聞いていたのか、遂に本人にまで知れ渡るとは、恐るべし。と少し戦慄したが、その後の言葉では不意打ちを食らわされた。「だから、俺が名前を想っていても自由だよな?」って、ニヤリと悪い笑顔を浮かべて、え、え、と戸惑う私を置いて「さあ、帰るぞ」と告げた。



まるで、夢の様な時間だった。好きな源田君からそう言ってもらえるなんて未だに白昼夢でも見ているのではないのかと思い頬を思い切り抓って見たが、醒める様子も無くて。「マジか……」と呟くことしか出来なかった。思うだけならただ。まさに、そうなんだが、源田君もそういう人間味のあるところがあるんだ、と驚いたのだった。容易くこの気持ち殺せるのって、言ったけれど前言撤回。思うだけならただ、なのだ。

Title 彗星

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