真白な空を見上げてみた



帝国学園では、恋愛はご法度だ。されど、この狭い要塞の様な学園に思春期の男女を一緒に閉じ込めておいて、それはないと思っている。鬼道にも総帥にも学園長にすら内緒の関係。こそこそ隠れながらする、恋愛はなんと甘美な味がするのだろうか。好きだ、と他の男をけん制したいのに、それすらも許されない日々はなんたる屈辱であろうか。例え罰を受けても構わない、名前が無事ならば、俺は何をされてもいい。そうとすら思える相手なのだ。愛している、なんて、生ぬるい言葉をかけては、睦み合う。夏の始め、夏の匂いを空気を感じ取りながら、そっと、隠れるように資料室で口付ける。ああ、我慢が利かない。



「げん、だ……此処、がっこ、」「ああ、知っている。節度は弁えているつもりだが、名前を前にすると押さえが利かなくなる。そんな俺は嫌いか?」敢えてわかりきった質問をする。きっと名前は恥らいながらも、俺の欲している言葉をリボンを巻いてプレゼントしてくれるはずなのだ。「源田が好き、嫌いなわけない。でも」「でも?」紙の匂いと少しの埃の匂い、誰も入ってこないのを知っていて、俺は、此処に名前を押し込んだ。「ばれて、源田が退部に成ったりしたら嫌。私は、源田のゴールを守っている格好いい姿が一番好きなんだから。勿論、普段の源田も好きよ」「ああ、わかっている、ばれやしないさ」



そう言って、節くれだった武骨な手で、撫でた。ああ、どうしてこんなに愛おしいんだ。佐久間にも鬼道にも、渡したくない。例え、学校の規則だとしてもそれに桎梏されるような想いではない。最初告白したとき、名前は戸惑っていたな、今思い出しても可愛いと思う。「えっ……でも、帝国って恋愛禁止だよね?」って戸惑ったように視線をゆらゆら彷徨わせていた。明らかに動揺していた。「そうだが」俺がそう答えると「私、退学には成りたくないから、ごめん、チクらないから安心しt……「本当に好きなんだ、」俺が縋る様に言えば揺らいだ瞳で俺を見つめた。何処が不安定な足場に居る様な脆い物であった。そして、彼女が俺に堕ちた瞬間だった。



「いつものように幸次郎と呼んでくれ」「こ、こうじろ……」薄桃色の唇がゆっくりと俺の名前をかたどった。ああ、幸せだ。「あの日、お前に拒絶されたときどうしようと思ったが、最終的に受け入れて貰えて良かった」「だって、あんな瞳であんな声音で、告白されたら誰だって受け入れちゃうよ」「どんな目で、どんな声色だったんだ?」俺は無自覚なうちにとても女々しい男に成っていたのではと思い尋ねてみたら耳まで朱色に染めた名前が呟いた。「焦がれた瞳で、切なげな声色だった」……。「女々しいな。俺」「そんなことないよ!幸次郎は、サッカーしている時とか一番格好いいんだから!」そこまで言って、恥らうように下を見つめ俯いてしまった。なんて可愛いんだろう。

Title 彗星

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