砂糖菓子みたいな甘い唇



(・霧野とテスト勉強をする話(付き合っている前提)糖度高め)


私の心臓に悪い勉強方法である。私の後ろに回り込み肩に顎を乗っけて、何処が間違っているか指摘して来る、蘭丸の回答は的確な物である。だが、それ以上に気に成って気に成って仕方ないと言うのも事実である。「だから、此処は……」蘭丸の吐息がふぅと耳たぶを掠める。私の耳まで熱いからきっと蘭丸はお見通しだろう。しかし、敢えて触れてこない。ただ、身じろいで少しだけ離れようとすると、蘭丸が「動いたら見えないだろう?」とお腹に手を回して来て抱きしめる形で勉強再開となる。私は絶望的に数学が駄目なので、徹底的にみっちりと叩きこんでもらっているのだ。「ね、ねぇ、蘭丸〜……普通に向かい合って勉強しない?これじゃあ、」集中できないよって言葉は蘭丸の口の中に消えて行った。



「んっ」「……集中しろ、集中したらご褒美にデザート買ってやるから」「本当?」安い女である。デザートにつられて、私は勉強を再開する。テストはもうすぐなんだ、近いんだ。今回赤点を取ったら親に怒られるし、蘭丸との時間も少なくなってしまう。それだけはなんとしても、避けたい事柄であった。カチカチ、時計の音が静寂の中、鳴り響いている。時たま、蘭丸の吐息がくすぐったくて(たまに耳朶を甘く齧られる)、ぞわりと背筋を何かが駆けていくような感覚に酔いしれながら。蘭丸の指導の下、宿題の半分を終わらせた。「ん、此処、間違っているな」「えっ」私がマジか、またやってしまったか、公式を忘れて……と思ったら蘭丸がまたキスを強請ってきた。「罰だ」「ん、」キスをすることが罰なのか!此処が公共の場ではなく自宅だからよいものを(親公認)。蘭丸の綺麗な双眸を見つめていると勉強に戻ろうかとまた、現実に引き摺り戻される。



「終わったー!」「おめでとう。間違いは……。んー、此処と此処……二つだな」「上出来でしょ?!私にしては」「そうだな。この二問は応用だから、仕方ないか……。よし、デザート買いにいこう」手を指し延ばされたので痺れた足でよろよろと歩き出し手を取る。デザートは何でもいいと言う事なのでとろとろプリンを買ってもらおうと思う。今日は超頑張った、自分へのご褒美だ。「ん、大嫌いな数学をよく頑張ったな、偉い偉い。」よしよし、と頭を撫でて貰うとくすぐったいよと抗議してみる。「あと、勉強中に私にちょっかい掛け過ぎ!もう!」蘭丸はくすくす笑うだけで、悪びれた様子も無く肩を竦めた。



「いらっしゃいませー」適度な温度のコンビニに入店すると、プリンを手に取って、蘭丸これこれ!とアピールをする。蘭丸ははいはいと言って財布をズボンのポケットから取り出してレジに向かう。それまで、近くで待機。無事に、会計を済ませ私の家にまた戻る。買い物袋の中のとろとろプリンはいつも私の舌を楽しませてくれる。蘭丸を家にあげ、また自室に戻る。プリンを開封して一緒に入れて貰ったスプーンで一口。ああ、生き返る。蘭丸は飲み物を買ったのか、ゴクリ喉を鳴らして飲んでいる。相当長い時間何も口にしていなかったから、仕方ないのだけれど。蘭丸が視線に気が付くと「俺にも一口頂戴」と私のプリンを要求してきた。仕方なくプリンをつついて崩し蘭丸にあーんさせる。「ん、うまい」



「だけど」蘭丸がそう言った瞬間の瞳が貪欲な、野生の肉食動物を思わせるような鋭さを帯びたのに気が付いた。「俺は名前の方が好きだなぁ」しっかりとホールドして逃がさない様に蜘蛛の巣を広げるように捕まった蝶の様に。ゆっくり蘭丸がキスを落とす。「俺も頑張って教えたんだからさ、ご褒美くれてもよくないか?」え、と言葉を喉元で突っ返させた。それってどういうことと見上げると決まっているだろう?と言わんばかりの不敵な笑みでねじ伏せられた。「それにしても、勉強中の名前とっても可愛かったなぁ」「あ、やっぱり吐息とか全部わざと?」「耳たぶにかみついているのに、わざとも何もないだろう?」



やっぱり全部蘭丸の策略だったんだ。私を少しでもその気にさせようと、最初からドキドキさせていたんだ!「ビクビク一々震えて本当直ぐにでも食べたくなっちゃったよ」「蘭丸のスケベ〜!」蘭丸を罵倒すると蘭丸は心外だなという表情をしていて「何言っているんだ?好きな女の子の前では男はいつだって、そうだろう?」それに俺達付き合ってそろそろ一年だし。と付け加える。ああ、嫌だ嫌だ。蘭丸のあの体制は何度抗議しても変えて貰えなかったし、私は最初から食べられてしまう運命にあったんだ。きっと、そう。「大丈夫、優しくするから。あと、他にわからない教科とかあったら付きっきりで教えてやるからな」「またあの体制で?」「そうだけど」やっぱり悪びれも無くシレっとした様子で言うので、もうどうにでもなぁれ。と思い蘭丸に体を預けた。

Title Mr.RUSSO

あとがき

暇つぶしなので前回、リクエストしたから〜とか気にしなくて大丈夫ですよ。寧ろ嬉しかったです。勉強の時間が短かったですねすみません。有難うございました。

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