夢から醒めた、ただの人間



夢はね必ず覚めるって決まっているのよ。カチ、ボールペンを取り出して夏未の結婚式にお呼ばれしたから私は夢から覚めるために行くのよ、出席に丸印を書いて。



夏未の結婚式はささやかな物だった。友人を招いただけの。私は少しだけ着飾って、夏未はウェディングドレスを着ていて、ああ、やっぱりこれは現実なんだなって思い知らされて。私は、夏未が好きだった。中学の頃からかな。ツンケンしていて、友達が全然居ない夏未の唯一の友達だった。だけど、サッカー部のマネージャーに成ってからは音無さんたちがお友達に成って、悪夢の様だったのを覚えている。私だけの物だったのが、皆の夏未に成ってしまったの。私と二人きりだったのが次第に一人二人と増えて行って、数えるのをやめた。そして、夏未は円堂が好きだった。まだ親友のポジションに居たから知っている、夏未が恋い焦がれた瞳で円堂を追って言ったの。「私ね、円堂君が****」



悪夢はね、必ず覚めるって決まっているのよ。いつかは綺麗な世界に包まれて幸福の中で私は一人、夏未と夢心地(そんなの、嘘よ。夏未は円堂の物なのだから)。夏未の為に読む、文章は涙で滲んでよく見えないし、涙声だ。スピーチなんて初めてだから緊張したけれど私は精一杯書いたのよ。だって、私は夏未の**だから。そういうポジションだから、哀憐しないでよ。大体、私が可笑しかったのよ。女が女を好きに成ったんだから。普通女の子はね甘い砂糖菓子みたいな恋を男の子として、結ばれるんだから。どんな童話もそう。最後は素敵な王子様に抱かれてハッピーエンド。私は御姫様じゃあないの。



「名前さん、どうして泣いているの?」「夏未のウェディングドレス姿がとっても綺麗だったからよ、私ねとっても幸せよ」嘘ばかり吐く口は縫い付けてやろうか、私は今とっても不幸なの。悲劇のヒロインなんか、柄じゃないけれど。夏未が顔を綻ばせて、そう、今日は来てくれて有難う。って殷々としているわ。此処は華やかで綺麗で洗礼された場所だというのにね、可笑しい話よね。此処は夢の果て、此処は夢の終わりの場所。誓いのキスを。ケーキの入刀を見てドンドン夢から覚めるの。私は可愛い女の子なんかじゃなくなっていて、もう大人のただの一人、夏未に焦がれていた女で。


夢から覚めた、ヒロインじゃないただの女は泣きながら、もっと幸せな夢を見ていたかったよと嘆くのです。喚くのです。綺麗なだけじゃないのよ、夢は。夢は必ず覚めてしまうと嘆く彼女に渡された透明なカプセル。それを飲んでまた夢を見るの、醒めない夢を。


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