愛憎の化身



私の中では水鳥ちゃんは一番大事な女の子です(好きです、大好きです、決壊しそうなほどに)。なのに、水鳥ちゃんの一番は私じゃなくて茜ちゃんみたいなんです。どうしたらいいんだろう?だって、私の中で一番なら、水鳥ちゃんも私が一番じゃなければ可笑しい。釣り合わないじゃないか。私の返事には生返事、たまに無視もある癖に、茜ちゃんの時には尻尾が生えていたらビュンビュン振っていそう。なのに、茜ちゃんは、神童が好き。可笑しいよね。こっちを向いてくれたら私が一生大事にするし、水鳥ちゃんは永遠に大事な一番なのに。



今日も一生懸命に彼女にアピールするけれど彼女の眼には私は映っていないみたい。都合のいい時にしか使わなくていいの、それでもいいの。私は彼女を愛しているの。宿題をさぼった時も写させてあげたし、授業をさぼる時も私がたまに手伝ってあげている。私は水鳥ちゃんにとって、とても都合のいい存在なの。それでも必要とされていることが嬉しくてその時考えているのは茜ちゃんじゃあなくて私だと思うと胸が張り裂けそうなほどに嬉しいの。でも、直ぐに私なんて要らない子に成っちゃうの。茜ちゃんが来たら、もう……、私は要らない子なの。



名前だって呼んでもらえないんだよ、名前って名前があるに一度も読んでもらったことなんかない。もう我慢の限界だよ、水鳥ちゃん。だって、ほら、一、二、三、四………………。数えきれない時間待ったよ。もう害のある生き物は大きく口を開けて貴女を食べようとしている。早く逃げなきゃ食べられちゃうよ。



私の下に組み敷かれた水鳥ちゃんが何かを叫んでいる。カァカァカァカァ、鴉の鳴き声で良く聞こえないの。ごめんね、水鳥ちゃん。私を一番だと言って、その艶やかな唇で囁いて。嘘でもいいから言って、私が「一番大好きだ」って。だって、私が一番大好きなのに、水鳥ちゃんが一番じゃないのってとっても変。不平等だよ、愛しているよ水鳥ちゃん。はじめて口付けた。味が塩の味だなんて、なんだか変だなぁ。

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