依存




「もう、一乃と別れたい」ボタボタ涙を流しながら、名前が言った。いつもは七助って名前で呼んでくれるのにこういうときはいつも俺のことを、一乃って苗字で呼ぶ。こういうのは初めてではない。何度か聞いたことあったし、そのたびに何度ももめたりしながら付き合っていっていた。俺は名前が好きだったし、名前も同じだった。ただ、お互いがお互いに依存しあっているのだ。ただ、名前はその事実に気がついているしこのままでは駄目になると気がついている。それと、違うところといえば俺のほうが名前に依存しているところ。俺とは微妙に違う。



「だって、もう駄目だよ。私は一乃を駄目にしちゃう……」このままじゃ、お互いが駄目になる。嗚咽しながら言う言葉はもっともなはずなのに、俺は君の事を離せそうにもない。いいじゃん、依存していけば。お互いがお互いを依存して縛りあって、愛し合っていけばいいじゃないか。俺には名前が必要だよ。「俺を受け入れてくれるのは、名前だけだ。愛しているんだ」



俺もありのままの名前を受け入れるから、別れるとか嫌だ。やめて。離れたくない。そんなの死刑宣告のように余りにも酷なことだ。そんなことされたら俺、俺。だってね、名前、本当は依存していたのは名前ではなくて、俺なんだよ、名前。今だって、別れたいって言っている名前に俺は必死に縋り付いている。「どうしたら、離れないの?俺なんでもするよ。ねぇ、名前、お願い」伝染したのか涙声になった俺の声が、体に響いた。お互いが磁石ならばびったりくっついてはなれないのかな?ああ、どうしたら離れないで済むのかな。どうしたら、名前のこと忘れられるのかな?どうしたら名前は俺のことずっと愛してくれるのかな?俺は名前なしじゃ生きていけなくなってしまうほどに依存しているのに。俺と名前を隔てる境界線なんかいらない、いらない。同じ白と白に境界線を引く必要なんて何もない。



「七助、ごめんね、変なこといって……。何でもない、の。ちょっと不安だったの」いつものように名前が俺の名前を呼んでくれた。ああ、よかった。これで大丈夫、大丈夫。俺が笑ったのに気がつかない名前はごしごしと自分の目を擦っている。ああ、駄目だよ。目が赤くなっちゃうよ。と名前の手を退かして瞼にキスをした。ほら、もう泣かないで。大丈夫、俺たちはいつまでも一緒だよ、名前。


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