イケメンUP!



馬鹿なネタでお話しています。夢主出てこない。デメテル視点。だけどアルテミス。


その日の、実弓は凄く上機嫌だった。練習のときも、絶好調だったし何かいいことあったのかな、と皆で首を傾げていたものだった。まぁ、顔は見えないからどんな表情をしているかわからないけど。あいつの顔は俺らでも見たことがない。というか……嫌がって見せてくれない。(友達なのにひでぇよな。)練習が終わって、着替えている実弓に話しかけてみた。「なぁ、何かいいことあったのか?」「……ん?いいこと……?…あー、いいこと……というか。欲しいものが手に入ったんだ」実弓がタオルで首筋を拭い、椅子に腰掛けた。俺も隣に腰掛けた。実弓の奴…欲しいものなんかあったのか。初耳だな。なんだろう?「……欲しいもの?何か欲しいものでもあったのか?」「ああ。イケメンアップの秘伝書だよ」「……イケメンアップ……?」イケメンアップってイケメンが覚える例のあれか。正直俺も羨ましいと思う例のあれだ。俺も、もてたいよ。女の子にキャーキャー言われたいよ。



って、おいおい。どういうことだよ。お前顔見えていないじゃん。それなのにイケメンアップ?ちゃんと説明してくれよ。そんなんじゃわかんねーよ。俺はほら、兜かぶってはいるけど顔見えるからいいじゃん。でも、お前見えないじゃん。大事なことだから二回言うぜ。顔見えないじゃん。「何でそんなもの欲しがるんだよ」「えー。俺、名前さん好きだから。イケメンアップ覚えて告白してこようかな、と」「……顔見えないのに、意味あんのか?」「大丈夫、大丈夫。それに男は顔じゃないよ。ハートで勝負って誰か言っていたよ」……なら、イケメンアップ覚えないで正々堂々と告白してこいよ。言っていることと、やっていることに矛盾があるぞお前。「じゃぁ、覚えていかないでそのままの実弓で勝負してこいよ」「やだ、振られたくないもん」もんって……殴っていいか?一発くらいなら許されそうな気がしてきた。「それに、これ高かったんだ。俺のお小遣い全部はたいちゃった」友達に馬鹿とか言いたくはないけれど、馬鹿かこいつ。



「よく言うじゃない。ただし、イケメンに限る!って」「……イケメンなら何でも許されるって奴か。人生イージーモード青春謳歌中だろ。とにかく、そんなものは使うな。意味ねーから」俺らの、敵ってそういうやつらなんだ、ってつくづく思うよ。別に人生ハードモードではないけどな。人生ハードモードだったら今頃サッカーしているか、どうか。「……うーん、やっぱそうかな?……うん、豊のおかげで目が覚めた。俺、イケメンアップ使わないで告って来る」そういって、実弓が何かを決意した様子で立ち上がった。おー、おー。応援しているよ。振られたら俺と一緒にどっか出かけような。愚痴くらいなら聞いてやるからさ。振られたら俺が名前さん狙うし。



「じゃ、逝ってくるね、豊」「逝ってらっしゃい。って、漢字可笑しいぞ」悲しいけど、玉砕覚悟だな。友達としてお前のことを応援してやろう。かばんを肩に掛けた実弓が出て行った。それを生暖かいまなざしで見守る。さ、て。俺も着替えてさっさと帰ろうかな。



玄関で俺が靴を履いているときだった。実弓の奴がパタパタと慌しく走ってきた。光じゃ、あるまいしもう少し落ち着けよな。まったく。「やったよ!豊〜!」声が明るい。結果は聞かなくてもなんとなくわかる。どうせオーケーもらえたんだろう。羨ましすぎて禿げちゃいそうだ。「はいはい、おめでとう」棒読みで決まりきった言葉を友人に贈る。だけど、興奮していてあまり気にしていないようだ。興奮気味に言葉を続ける。温度差って奴だろうか……。なんか俺今すげぇーさめている気がする。「オーケーだって!ミステリアスで素敵だって!やった!俺、幸せ者だなぁ〜。若しかして、運を使い切っちゃったのかな」……デレデレだな。ミステリアスって……。仮面か?仮面なのか?名前さんの趣味はわからないな……。ま、俺は女じゃねーからわかんねーけどさぁ……。俺だったら絶対嫌だけどなー……。「で、豊にこれあげる。イケメンアップ!もう、必要ないしね」イケメンアップの秘伝書を手に握らされた。……なんか虚しい。「じゃ、俺名前さんと帰るから。またね、豊。バイバイ」……腹立つけど、イケメンアップは貰っておこう……。実弓は俺に手を振って、名前さんの元へと駆けていった。ああ、名前さんは美人だな。あいつには勿体無い。



……それにしても……ミステリアスって、いいのか?好感度アップするもんなのか?俺も仮面とかつけてみようかな……。

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