人間カイロ



寒い寒い寒い……!ブルブルと身震いをしている体を抱きしめるように蹲った。何故、学校のストーブは壊れてしまったのだろうか。これでは、凍死してしまう。明日までには業者に頼んで、直しておくから今日は我慢して欲しいべ。と先生は言っていたけれど。しかし沢山、厚着をしているのにまだ、がちがちと歯がなっている。あまり真冬の寒さには耐性がない私には地獄のようだった。



「……名前ちゃんー。大丈夫だべか?」真都路ちゃんも普段より寒い教室に少しだけ厚着をしていた。真都路ちゃんのピンク色の頬も心なしかいつもに増してピンク色だ。しかし、私よりは何故か寒がっているようには見えない。というか、私の友達全員私よりなんだか、平気そうだ。た……耐性だろうか?温度計を見れば、恐ろしい気温になっていた。大体なんだ……マイナスってなんだ。マイナスって。ああ、そうだね、プラスとマイナスのマイナスだね。「だ……駄目。ふあ……ああ、なんか……眠くなってきた……。」小さく欠伸をして、重たい瞼を少し閉じる。「わーっ!駄目っ!駄目だべ!死亡フラグだべさっ!」起きて起きて、と両肩を掴んでガクガク大げさに揺らす。なんだか、それにすっかりと意識が覚醒した。まったく、学校で死亡フラグなんてとんでもない。フラグとはへし折るためにあると偉い人が言っていた気がする。「大丈夫、起きたから……。それにしても……何で真都路ちゃん平気そうなの?」「普段サッカーやっているからね」ニコッと周りの男性陣がノックアウトしてしまいそうな程可愛らしい笑顔を向けて私に抱きついてきた。



同性の私ですら、思わずその笑顔にドキッとしてしまった。しかし、そんなことを思っていたのも束の間いきなりのことに、驚いて後ろに倒れかけてしまった。何とか足に力を込めて踏ん張った。ああ……意外と何とかなるものなんだな。後ろの床は冷たいタイル。頭を打てばひとたまりもない上に、なんと言っても冷たい。そんな冷たい床に転がれば、女神様がお迎えにあがってしまう。「吃驚したぁ」真都路ちゃんは何を考えていきなり抱きついてきたのかわからずに、ありきたりな言葉がついて出た。先ほどの元気は何処へ行ったのやら。私の髪に顔を埋めていて大人しい。じんわりと熱が伝わってくる。真都路ちゃんは暖かい。きっと、私より体温が高いのだろう。私はどちらかというと、平均体温があまり高いほうではない。「ん……。名前温かいべ」耳元に囁くように、呟く。普段の元気な真都路ちゃんしかしらない私の心臓が大きく跳ねた。何処か艶っぽい小さな声。真都路ちゃんの顔は抱きつれているから見えない。「違うよ、真都路ちゃんが暖かいんだよ。私は凍死寸前だったじゃない」



「そっか、じゃぁ私が暖めてあげるべ。名前専用のカイロでいいべー」「人間カイロ?」先ほどの寒さは何処へ行ったのだろう。ぽかぽかと暖かい。そういえば、こんなに人を近くに感じることは滅多にない。こんなに、人って温かいのか。「うん。でも、使い捨てじゃないからずっと、傍に居るからね」「……捨てるわけがないじゃない」こんなに暖かく私を包んでくれる大好きな子を捨てるなんて、私に出来るわけがない。そういって、きつく抱きついたままの真都路ちゃんの背中に手を回してきつく抱き返した。別に明日もストーブが壊れたままでも構わないな、と少し薄れた意識でそう思った。

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