剣城優一



私の彼氏はサッカー大好きだった子。遠い遠い過去に、弟の京介君を助けて代わりに自由の利く足を失った、痛かっただろうに呻吟しながら助けを請うただろう。死には至らなかったそして、今も生き続けている。優一君。一番、優しいと書いて優一君。カラカラ、カラ。私はいつも優一君をお外へ散歩させるのに、車椅子を移動させる。カラカラ……車輪の唄は、止まない。サッカーの練習風景をテレビで見ながら、暗い溜息を吐く。本当は優一君だって、あの場に立っていても不思議じゃなかったんだし、本当は優一君だって、サッカーがしたかったはずなのに。この足はいうことを聞いてくれない。


だから、光の代わりに暗い影を。ボールを蹴る風の代わりにキスを落として。煌めく汗の代わりに「愛している」の魔法を。私の髪の毛を撫でながら「これからも、このままだと」私は知っている。眠っている時に見る夢を。サッカーの夢だ。足が少しだけ動くのだ。……貴方が好き。動けないから、私の傍に居てくれるということを知っているのに、なんて、酷い女なのだろう。貴方が好き。


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