サル



名前は確かに恋をしていた時の記憶を無くしていた。僕が無くした。ただ、恋をしていたという事実だけは覚えているようで、ツーッと、涙を一筋零して誰を思慕していたのかとか考えに耽っているようだった。僕は名前が好きだった。だけど、名前はフェイが好きだった。だから、消した。フェイも遠くに雷門イレブンの所へ追いやって(それが任務だと言って)成る丈思い出せないようにしていた。ただ、辛そうに胸を押さえていた。きっと疼痛がするのだろう。涙が勝手に溢れ出る程愛しいと思う気持ちが確かにあるのに、何一つ覚えていない。それが歯がゆくて、苦しいんだと思う。「私は、誰が好きだったのだろう。この感情が偽物だといいのに。なのに、心臓を待ち針で刺されるような痛みは本物で……」そう、何もかも本物。「記憶を消してごめんね。お願い、許して……全て僕が悪いんだ。僕のエゴなんだ」これも本物。偽物何て一つも無いんだよ。名前は涙を零しながら、肩を細かく震わせながら「いいの、気にしていないよ」とニコリ泣きながら笑った。

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