豪炎寺



ああ、今日も本当に詰まらなく退屈で、何一つ変わらない日だった。今日の授業も相変わらず、年老いたもうじき定年退職の教師が英語を単調で、感情のこもらない声で朗読していた。興味はまるでない。トムとか、ミックだとか教科書の人物がどうなろうと知ったことではない。大きなあくびをひとつ手で覆って、随分と席の離れた豪炎寺君を覗き見た。私と違って真面目に、先生の話しに耳を傾けているらしく片肘を机につけ頬杖をつきながら真剣な面持ちで、先生の顔を見つめていた。



じっ、と視線を彼に集中していたら豪炎寺君が振り返った。視線に気が付いたらしい。私は慌てて、視線を逸らす。私には豪炎寺君に思いを告げるほど、自信があるわけでもない。話しかけるだけでも精いっぱいだ。見ているだけで、十分で胸を満たすことができる。それだけで、幸せなのだ。だから、思っているだけでいい。視線を彼の元に戻すと彼はまた、真剣に授業に耳を傾けていた。


ああ、よかった。きっと、気が付いていない。私の思いにも。安堵しつつも今度は見つめすぎないように気を付けて、私は先生に視線を向けた。臆病者の末路なんて、きっと悲惨な物だろう。それでも構わない。天秤につりあうことも無い。ただ、好きなことを許してもらえれば私はいいのだ。

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