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斬鉄様の長い髪の毛を三つ編みに結う事と顔に独特の模様を描いてあげることが私の最近の日課に成っている。前は一人でやっていたらしいのだが、どうして、私等に任せる気に成ったのかは不思議でならなかった。手で梳きながら、編みこんでゆく。「痛くはないですか?」「ああ、痛くねェ。続けろ」許しを得て、継続する。最近は、強いとはいえ、午前試合に出ている斬鉄様を憂慮している。鬼族だとばれやしないか、その場で殺されてしまわないか心配でたまらないのだ。どすの利いた声が私を呼んだ。「おい、名前。手が止まっているぞ。早くしろ。今日も剣取りがある」いかないで、と言えたならいったのだろうか?



「は、はい。出来ましたよ」私が名残惜しそうに手からその長い新緑の髪の毛を離した。斬鉄様が私を見ている。ジッと穴が開きそうな程に、背中を見透かしているように。そして、私の両頬を押さえた。「なぁに、心配そうな顔しているんだ」私はそんな顔をしていたのだろうか。斬鉄様を困らせたくないのになァ。そのまま、美しい顔が近づいてきて唇に優しい口吸いを施された。「必ず帰ってくる無事にな。だから、そう心配そうな顔をするんじゃねェ」俺が、離れたくなくなる。と呟いた声が聞こえた気がした。



私はその他大勢の鬼族の一人に過ぎやしないと思っていたのに自惚れてしまいそうに成る。「必ずですよ?斬鉄様」私、斬鉄様の居ない世界なんて考えたくないんです。どうか、無事に。そうだ、今度守り袋を作ろう。そうすれば、斬鉄様を守ってくださるかもしれない。ああ、斬鉄様……、どうぞ、御武運を。

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