浸食される私の世界



(忍び、恋うつつの我来也/失恋)


僕は生まれて初めて、友達と言う言葉が呪わしく思った。皆が皆僕を忌み嫌い、疎んでいたあの日、僕は友達を希っていた。そして、僕は異性の唯一無二の友人を手に入れた。それが彼女、名前だった。最初は距離感もわからずに、名前と色々な物を分け合ってきた。同じ椅子に座って、竹筒から水を分け合って。僕はそれが最高に嬉しかったんだぞ。だけど、それは段々と違う感情に変化していくのに気が付いていた。それは祭りの帰り道に、男女が寄り添いながら膝枕をしてもらっているのを目撃したところからだった。僕も名前に膝枕をあの恋人たちの様にしてもらいたいと思ったのだ。そして、僕のお願いを“友達”だからと受け入れてくれた名前の膝を堪能しながら僕は、本当に恋人だったらよかったのにと思ったのだ。



だけど、現実と言うのは残酷だった。僕の望みを打ち砕く様に、僕の一世一代の告白を「私と我来也君は友達だよね」と遠回しに断ったのだ。僕の、告白の仕方がまずかったのかもしれない。僕は友もいなければ、そのような思慕する相手も居なかった。圧倒的孤独だった。だから、間違えたのかもしれない。だけど、僕はその時絶望したのだ。友よりも、何よりも欲しく成った存在、名前が恋人と言う立場に昇格してくれず、いつまでも友達と言う立場に居ると言うことに。僕は一種の呪縛の様に思えた。尊き、君(友達)の呪縛。いつだったか、僕の独占欲は病的なものがあると言われたが、そうかもしれない。日記では否定したが、金と銀で編んだ鳥籠の中二人きりで、永遠の愛を唄いたい。



それから、羽をもがれて何処にもいけないお前の羽のあったであろう場所を舌で舐めて癒してあげたい。何処にもいけないいけないと、泣くお前の傍らで歌を唄おう。お前が寂しくないようにいつまでも、傍に居てやろう。外の世界は広かろう。されど、今回の僕たちの様に徳川残党や、お前のその血を狙う奴らで世界は溢れているのだと吹聴して、閉じ込めてしまいたい。僕の腕の中でおやすみ。世界は二人きり。僕とお前の二人きり。だけど、それでいいじゃないか。僕らは、…………。



ああ、何て、呪わしいのだろう。“友達”と言う呪縛は。


Title リコリスの花束を

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