アオイロ子猫の哲学



(剣が君のシグラギ)
逆トリップ


家に珍しい着物を着た男性がいた。黒い頭巾を被っているそれはとても見覚えのある姿かたちで、私が声をかけると「お前……シグラギちゃんシグラギちゃん!って騒いでいた奴だな!ちゃん付けするな!」あの、とか言う前にそう捲し立てられてしまって。あちゃー、これは現実の世界にシグラギちゃんがトリップしちゃったんだな、と難しいが何とか悟った。「っつたく、低俗な人間の家に等入りたくないが……此処は興味深い物ばかりだな……」そういって、冷蔵庫やテレビを見たり部屋を見渡して、息を吐いた。驚かしてやろうと、テレビのスイッチを付けてやると今話題の芸能人が、いて周りが爆笑の渦にのみ込まれていた。シグラギちゃんはビクゥと体を跳ねさせて鎖鎌を構えた。物騒だ。



「これはテレビって言って面白い物が見られたりする道具だよ」「つまりこの箱の中の小さな人間はこの箱に入っていないという事か」飲込みが早い。次に冷蔵庫を開けてやるとひんやりした空気に食品が一杯詰まっていた。「これが冷蔵庫。保存がきく道具だよ」「それは便利だな。俺たちの世界には無かった」だろうなぁ、世界観が世界観だし……。と思った所でシグラギちゃんをどうしようと考えた。まずはこの世界の説明が必要かと思い、私が話しかけた。相変わらず不機嫌そうな顔である。「えーと、まず、この世界には鬼族は居ません「それは人間が俺たちを皆殺しにしたってことか?」シグラギちゃんの手はぎゅうと血が出るくらいに強く握りしめられ殺気だっていた。



「あー、そうじゃなくてね、最初から鬼族はこの世界には居なかったんだよ。言わば、架空の存在ってやつかな」「この世界には鬼族は居なかったってことか、」随分と物わかりが良いようで助かった。下手したら鎖鎌で殺されていたかもしれないのに。「取りあえず俺は此処を出る」「えっ。お金とかは?!」「多少持っている」そういってチャリチャリ見せてくれたのは古いお金である意味価値はあるが、これでは寝泊まりや食事は出来ない。「それじゃ、この世界で生きていけないよ」「何?!」「お金はこういうのだもの」そういって、世知辛い世の中でくたびれた財布を取りだし、中身を見せた。シグラギちゃんが愕然としていて、俺の金が役に立たないだと、としな垂れていた。



「私の部屋に居なよ。その角を隠す帽子も買ってあげるし」「これじゃ駄目なのか?」黒い頭巾を被るがそれではこの町で浮いてしまう。「それじゃあ、奇異の目で見られるよ」と残念だけど却下といって、私は帽子をしまっている場所から帽子を取り出した。ニット帽だったが、これで、シグラギちゃんが鬼だとばれることはないだろう。というか、ばれたら人体実験とか言って連れ去られるにではと心配に成る……。「なんだこれは」「角生えている人いないから隠すために……、」「……。ま、まぁ、礼を言っておこう」といって気に入ったのか、もふもふ触っていた。「あと、温泉程じゃないけど、お風呂があるから使ってね」



今夜も涼しい夜だ。困ったことにもう夏に向かおうとしているのに寒いのだ。シグラギちゃん用に毛布と枕をっと思ったが、そういえば、お客様用の布団とか無かったんだった。「シグラギちゃん。もう寝るけどどうする?一緒に寝る?」「なっなっ、なっ……!婚前の女と寝るなんて破廉恥だ!」「だって、お布団も何もないからシグラギちゃん、冷たい床でしかも寒さに震えるながら眠るんだよ?」「それくらい慣れている」それでもどうしても心配だったので(シグラギちゃんと眠りたかったって言うのもあるが)無理にお布団に引きずり込むとシグラギちゃんが顔を真っ赤にしていた。「ば、馬鹿じゃないのか!というか、誘っているのか?」「え、そこまではないけど、シグラギちゃんと一緒に眠りたかっただけ」



シグラギちゃんはフンとそっぽを向いて眠りにつこうとしていたので一人用のベッドで嫌でも密着しちゃうそれに恥ずかしさを多少覚えながら「おやすみなさい、シグラギちゃん」と囁くように言ったのだった。シグラギちゃんからの返事はないかと思ったが「さっさと眠れ!俺まで寝付けなくなるだろう……」と返事が返ってきて嬉しくなっていつのまにか居なくならなければいいのにな、夢じゃなきゃいいな。と考えながら電源が行き成り切れた様に眠りに落ちた。

Title リコリスの花束を

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