恋人への階段を駆け上がれ!!




(・剣城でギャラクシー編、アースイレブンの一部が若干腹黒)



彼女は恥じらいを持ったりなどしない。特にこのようなことに関しては、クールに思ったままを言う。剣城が好きか?と言う問いには「……僕はまあ、好きだと思う」と単純に言ってのけた。これでは、剣城に恋愛的な意味での好意を持っているのか、はたまた友人としての好意を持っているのか周りはわかったものではないので、面白くない。彼への敵は多い、多いどころか、大体は敵だと思ってくれてもいい程だ。元の雷門イレブンから離れたからこれで、安全だと剣城は思った。



だが、しかし、事態は剣城が思っているより悪かった。アースイレブンの一部の男子は名字のそのクールさとミステリアスな雰囲気にのみ込まれてしまった。剣城は溜息をつきながら、さてどうしたものかと、鈍い痛みを放つ額に手を当てた。電波なんて繋がるはずもないので今度こそ本当の本当に、携帯は役目を終えてしまった。今はイナリンクで多少繋がれる程度だが、誰でも見れるそれでは滅多に名字は絡んでこないし、見ていないのか見ているのかわからないが、出現頻度も低い。稀に現れても神出鬼没で、直ぐに失せてしまったりする。



そんな剣城の様子を見て面白がるのはアースイレブンの人たちだった。剣城も、どちらかというとクールな部類に属されるので、こんな姿は滅多に無いと邪悪ともいえる笑顔で接して来る。「いやぁ、残念だね?」瞬木がいつものように思ってもいない上辺だけの言葉を並べて、肩を叩いた。実際は残念どころかザマァとすら思っているわけだが、彼の底知れない深淵には誰も辿りつけないままである。時折見せる暗い影と言葉はかき消されてしまう。続いて、皆帆も慰めるように瞬木の後に肩を叩く。「仕方ないよ。彼女の性質上、イナリンクとか見える場所での交信は好かないみたいだし。そもそも、彼女、地球にいる頃も秘密主義者みたいなところがあったんじゃないかな」



持前の分析力、人間観察力は健在であり、耳をぴくぴくと小動物の様に動かして笑んだ。勿論、心の底から笑んだりなどしていない。追い打ちをかけるように、瞬木が言った。「そもそも、付き合っていると思っているのは自分だけだったりしてね?だって、名前って、自分から逢いに来てくれたりしないし殆ど、一方通行みたいな状態だし、実は自分の思い込みかもなー、よくあることだよ。勘違いって」これには酷く剣城も落ち込んでしまった。あ、あ、あり得る話だ。決してゼロというわけではない新たな可能性、自分と名字は付き合っていなかった。



可能性の域は脱しないままだが、自分が付き合っていると思い込んでいるだけで、若しかしたら向こうからすれば仲のいい男友達なのかもしれない。そう思うと疼痛がして、息が苦しくなり身が二つに引き裂かれるような思いをした。「果たして、そうなのだろうか」「その可能性はゼロではないね。彼女から、剣城君への好意は感じるけれど特別の域まで達しているようには僕には感じられない。恥らっているのかもしれないけれど、違うかもしれない、彼女は中々読めなくて、とても興味深いな」観察対象としても、それから。その先は剣城を恐れたのか、口内にぎゅうぎゅうと整理整頓をしていない押し入れに押し込められたままのように出てこなかった。



誰かが談話室にやってきた。此処はセオリー通りである。まあ、此処で別の人物がやってきてもそれはそれで混沌として面白くなるだろうが。後半の部分を少しだけ聞いたのだろう「僕がどうした……?」と聞いて来たのだから、そうだ。もう思い切って俺たちは付き合っているのか?と剣城が聞こうとしたところ、皆帆がいち早くそれを(わざとかもしれないが)遮り尋ねた。「名前は剣城君と付き合っているのかい?」名字は怪訝そうな顔をして剣城の顔を一度見合わせた後に、軽く盾に頷いて「そうだけど」と言った。お腹真っ黒な、男性陣はドヤ顔の剣城に敗北を喫したのである。


title リコリスの花束を

あとがき
腹黒を今一、飲み込めずにこのような状態に成りました。ギャラクシーの子たちもあまり書かないので偽物臭が半端ないのと、女の子も出したかったです。此度も企画へご参加有難うございました。


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