ぜんぶぜんぶわざと




(・同級生ヒロトと休日)


ヒロト君との関係は、まあ、仲がいい方の友達だと思う。何せ、学校のない休日の日に二人きりで逢うくらいなのだから。恐らく仲は悪いわけではないと思われる。見ようによっては恋人なんかではないかと邪推する者も現れるくらいなのだから、ヒロト君だっていい迷惑に決まっている。私は因みに、噂は噂だと思っている上実害がないので、別に放っておけばいいと思っているし、そんな噂を垂れ流していても特に何もないのだし、一緒に居る以外は事実無根なので、その内飽きるだろうと踏んでいる。



事実話題は、少しずつ別の方向へ向かって行っている。最近では、二組の佐藤さんが彼と大喧嘩して問題に成ったとか成らないとか。転校性がやってくるだとか、大きな問題、変化ではないにしろ日々は目まぐるしく、それこそ、秒針の如く忙しなく動いているのだ。地球の鼓動と似ている。いつもひっそりと息を潜めるように私の部屋で、あまり有意義とは言えない時間を過ごしているのだが、今日に限ってヒロト君が提案をしてきたのだから驚いた。「たまには外で過ごしてみない?」って茶目っ気に笑って見せて。



別にヒロト君と外に出るのが嫌なわけではなかった、人に見つかったら、折角忘れ去られているであろう話題が、熱がまた燃え上がり話題に上ってしまう。それを恐れての事だった。ヒロト君に迷惑をかけるし、何よりも、奴らはからかってきたりしつこいのだ。あーあー、全く下らないなどと言って全てをさらりと流せるだけの力があればどれだけいいか。ヒロト君にそれを言ったら「気にしすぎだよ」と受け流されてしまった。そう、その余裕が私にはないのだ。普通はもっと色々な感情(恥ずかしいだの、誤解だの、勘弁してくれだの)が綯い交ぜになるはずなのにそれがまるでないのだ。私とヒロト君の差は何処にあるのだろう?



外に出ようと提案したのは彼だったけれど、特に当ても無くぶらぶらするだけのようだった。欲しいシューズを見たり途中で、美味しそうなたこ焼きに目を奪われて二人で分け合ってベンチに座って行儀よく食べたりとか、そんなレベルだった。たまにはこうやって外に出て、日光を浴びながら遊ぶのも悪くないなぁなんて平穏な時間を噛みしめてそう思っていたのも束の間だった。ある聞き馴染んだ声によってそれが壊されたのだ。



「お、デートか?!」たこ焼きを食べた後だったのでゆすぐように、飲み物を口にして嚥下していたのだが、逆流しかけてしまった。背後から不意を突かれたのだ無理もないだろう。声の持ち主はチューリップ……じゃなくて、南雲君だった。あーあー、涼野君に見つかった方が断然よかったなぁ。厨二入っているけど、南雲君よりは口が堅いだろうし。見つかる相手が最悪すぎると思いつつ、広めるなよーと圧力の眼差しを向けた。



だが、彼にはその効果は無いようだ。ケロッとした顔で、いたずらっ子の顔をしていて。ああ、こいつぁ駄目だ。広めちまう。と瞬時に悟ってしまった。ヒロト君をチラチラと見て誤解を今すぐに解くべきではないのか?それも、早急に手を打たねばと視線をおくれば穏やかに笑みを湛えるだけで決して誤解を解こうなどと言う行動には出なかった。それどころかだ「そう見える?」なんて煽るような(誤解を招くような)事を言うもんで余計に彼を興味やら何やらを諸々、刺激してしまったようだった。



へぇ、なんてニヤニヤしながら、俺は邪魔しないように先に帰るななんて、らしくもなく気を使ってくれた。南雲君に空気を読むという、能力が備わっていたのかと少しだけ関心をしていたが、事態はそれで収まらないと薄々思っていた。ヒロト君が彼の背を見届けた後に私に向き直る。「気を悪くしちゃったかな?」「いや、でもあれは、まずいんじゃ」どちらかというとまずい部類の人間だよとまで言いかけたが何とか飲み込み胃に押し戻した。「既成事実、作ろうかと思って外に出た、なんちゃってね」また、笑った。冗談なのか本当なのかわからないけれど。だとしたら、相当策士ですねヒロト君。


title Mr.RUSSO

あとがき
どんな感じがいいのか迷った結果のこれです。エイリアはあまり書いたことないのですが、つまったりはしなかったです。休日なのか、ちょっと怪しいですが。有難うございました。


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