脱兎の如く!




(・狩屋の姉でシスコン、弟なのをいいことにベタベタしてくる。霧野は無自覚だけどそれに嫉妬して告白まがいの事を言う)


狩屋をとても疎ましいだとか、なんで俺にだけ攻撃し、こんなに敵視して来るんだ!とか思っていた時期もあったさ、ああ、ぶっちゃけちゃうと、とても気に食わないだとか思っていたさ。だけど、今はそんなに前ほど突っ掛ってこないし、随分と大人しくなったし、猫だってあまり被らなくなった。それなのに何だって俺はこんなにストレスを溜めているのだろう?別に普段一緒に居る分にはそこまでストレスを感じることはない。だが、とある人が絡むと突然にキリキリとした痛みを帯び、むかつきを覚えるのだ。



そして、そのある人物と言うのが「姉ちゃん〜、ドリンク」「マサキ、はいはい」……狩屋と一つ年の違うお姉さんである。狩屋よりも心が荒まなかったのだろう、温和で優しい。見た目は狩屋に似ているけれど、性格は真逆である。昔に狩屋に色々と吹っかけられていた時だって、眉根を下げてうちのマサキがごめんなさいね、って謝ってくれた。それから狩屋を叱ったそうなのだが、それも大好きなお姉ちゃんに叱られたのはこいつのせいだ!と思い込んだシスコン狩屋は気に食わなかったのだろう。余計に悪化したのは言うまでもない。因みに形式上、狩屋のお姉さんや狩屋ではあまりに素っ気ないので名前と呼んでいる(狩屋だとどっちのことを呼んでいるかわからないしな)。



「姉ちゃんは俺専属のマネージャーでいいのに、なんで他の人の世話もするわけ?」文句を垂れ流しながら狩屋が酷く不満げに、口を尖らせた。名前はそれを一応叱咤するが、頬が緩んでいて満更でもないような様子だった。そりゃそうだろうな、弟に懐かれて嬉しくない姉なんて居るのだろうか?俺だって、自分に凄く懐いてくれる兄弟なんていたらデレデレしてしまうと思う(まあ、居ないので、ただの想像であるが)。「マサキだけ、なんて駄目だよ。確かにマネージャーに成ったのは、マサキが心配だったからだけども」……なん、だと。「姉ちゃん……!」狩屋が感極まったように、座ってドリンクを飲んでいたのだが急にドリンクの蓋を閉めて、立ち上がり姉ちゃん好き好きオーラ全開で抱き着いた。何年振りの抱擁だよと言うくらい全力。姉弟愛も此処まで来ると麗しいどころか鬱陶しい。



「もう、マサキったら。他の人が見ているからやめてよ、恥ずかしい」「いいの!姉弟だし、やましい事なんか無いし、誰も見ていないじゃん」甘えるなよ、俺が見ている。とは言わずに口の中に言葉はとどまったままだった。大体、度が過ぎているとはいえ俺が何か言っていい物だろうか。しかし、何かが足元から溜まっていく感覚がするのだ。何時溢れ出すか俺自身が把握できない。そして、崩壊の時がやってくる。唐突過ぎて俺も吃驚してしまった。「狩屋!今は練習中だろ!」「何ですか、霧野先輩。姉と親睦を深めているだけじゃないですか」「十分すぎるだろう!それに大体、恥じらいを持ったらどうなんだ!」「お互い同意の上ですから?」しれっと言ってのけるけれど度を過ぎている。あれでは、まるで姉弟と言うよりは、恋人じゃあないか!



ああ、まさか名前と狩屋の奴は禁断の何とかと言う奴に手を染めているのか?!だから、あんな人目も憚らずにそんなことができるのか?!絶対に名前にとってよくない結果を招くに決まっている、今すぐ目を覚まさせてやらないと!「おい、狩屋そういうのはやめておけ!」「なんですか、そのそういうのって」「きょ、兄弟で……その、」そこまで言うと鈍くはない狩屋も何を言いたいのか気が付いたらしく、つりあがった瞳で俺を睥睨したまま口元を歪めた。「なんですか、霧野先輩〜、姉ちゃんが好きなんですか?」「ま、マサキ……何言っているの、そんなわけないでしょう」そうやって挑発するところはマサキの悪い所よと苦言をしているが、そんなのお構いなしだった。



「そ、そんなわけないだろう!」声が裏返った。それに狩屋が何らかの確信を得たらしかった。更に笑みを深めて面白いおもちゃを見つけたって顔をしていた。「名前は嫌いじゃないから兎も角、狩屋のお兄さんだなんて冗談じゃない!」「お、俺の、兄さん……?!こっちだって願い下げですよ!」「?」俺はがなり立てる狩屋と疑問符を頭にいくつも浮かべている名前にようやく事の大きさを痛感して、居てもたってもいられなくて逃げ出した(逃げても無駄だけどな、翌日の練習で顔を突き合わせるのだから)。



あとがき
甘えるってどんな感じだろうかとか告白まがいはどの程度の事を言うのだろうと悩んだ結果がこれです。狩屋は書いたことも無くも無いのですが、なんかコレジャナイ感があって出せないのですよね。此度は有難うございました。



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