星を甘くする方法はね




(・サルでお任せ)


メイアとギリスは無駄に騒ぎ立てている二人を見て溜息をつくのだった。お互いがお互い猜疑心と不安に駆られていて、言い分が頭にその内容が入ってこない。膠着状態でそれの繰り返しだ。メイアとギリスは、言い合いが始まるずっと以前にワクチンを打った。ものの数秒時間を取られただけであって、あとは愛しい恋人との時間を過ごすわけだ。変わった変化は一つだけ、もう超能力を操る事が出来ないと言うだけだ。普通の子供に成った。あとは、何もない。そう何も。だが、その大事な時間を今この二人に裂かれている、二人は溜まったものではないがいかんせん、彼らは友人でもある。しかし、何故、普段は仲睦まじいサルと名前ががなり立てるのか。



奇しくも理由は同じなのだ。ギリスとメイアはそれぞれ聞いたが示し合わせたように同じことを言うのだ。二人も仲がいいが、名前とサルも負けない。ギリスがサルを宥め、早くワクチンを打つように促す。「気持ちはわかるよ、」「いいや!わかるもんか。メイアはギリスとずっと居るかもしれないけど、名前は僕を裏切るに決まっている!先に打ってと言っても打たないのだって、やましい気持ちがあるからに決まっている!僕にワクチンを打ちたいなら先に名前からじゃないと」口を尖らせて言う。まあまあ、と宥めながら束縛とそれから嫉妬が強いのだなと名前に少し同情を抱いた。自分もメイアに対して執着はしているけれどそれは、メイアが自分から離れて行かないのを知っているからだ。



一方のメイアはメイアで名前に手を焼いていた。一向に名前もワクチンを打つとは言わないのである。きっぱりと拒絶している。「嫌だね!ギリスはメイア一筋かもしれないけれど、サルはきっと鼻の下を伸ばして可愛い女の子の元に行っちゃうもの!あいつ、私の事、信用していない!メイアはいいよねー。ギリスも信用してくれているんだから」「名前……。それはお互い様だと思うんだけど、」呆れたメイアが言うと全然同じではない!との返答。実際は同じである。醜い嫉妬心と猜疑心に駆られているのだから。



サルと名前が想像しているよりも、いや、もっと世間広いのかもしれない。だから、お互いが普通の子供に戻った時に、自分たちの世界がいかに狭く限られたものしかなかったと気付き、もっといい異性を見つけて離れてしまう。それを互いが恐れているのだ(二人は互いを必要とし、一番辛い時を共に過ごしてきた)。切っ掛けも些細だった。「名前から打ってきなよ」「私は後からでいいよ、サルから」なんて最初は互いを思いやる物だったが、ふとした瞬間に互いが思った。このまま打って、自分たちは一緒に居られるのか?果たして、離れないという確証はあるのか?元々サルと名前は一緒に生きて死のうと契った仲だ。



しかし、この膠着状態もようやく終わりを告げる時がやってくる、ギリスのこの一言である。恐らく、言い合いにより頭の隅からも追いやられていたのだろう。サルがその言葉に目を剥いたのがその証拠であった。「……放っておくと二人とも死んでしまうよ?」「……」そこからは事の運びが早かった。「名前、一緒にワクチン……打とう、」力無く、反省したような顔つきでメイアと一緒に居る名前に声をかけた。名前は最初、酷い目で下から睨みつけているようだったが直ぐに己を恥じた。名前も頷き雨に打たれている子犬の様に項垂れた。



やはり、ワクチンの接種には数秒もかからなかったし痛みも無かった。二人は今まで言い合ったことも無かったためか、少しだけ気恥ずかしそうにはにかんだ。それから、いつもよりぎこちない動きでお互いの指を絡めた。「これで、普通の子供、なんだね」「ああ……、これで名前の大人に成った名前と居られるんだ、それってとっても幸せなことだ、大人に成った君もさぞ素敵だろう」「きっとサルもね」「僕、結構、束縛強いよ。きっと、これからも名前のこと離してあげられる自信無い」「知っている」「それから、嫉妬もするから」「それも知っている、私もそうだから」



似た者同士の恋人はどうやら仲直りしたらしく、どうなるかと二人を案じて見守っていたギリスとメイアがほっと息を吐いた。影が揺れる。やれやれ、今回はお疲れ様と言ったところだ。


titleカカリア


あとがき
もう一つ頂いたサルさんを暗い感じのにしちゃったので明るめなのにしようと思い明るめのを目指してみました。杏奈様もサイトをやっていらっしゃるのですね、こそっとお邪魔させていただきました!此度は企画参加有難うございました!


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