君の新しい城




(・サルとエルドラドの女の子で、傾向はお任せ)

とばっちりを受ける、レイ・ルク。サルは歪んでいます。


別にこちらから逢いたい等と言ったことは一度も無い。そもそも私たちは敵同士で、殺し合いレベルの対立をしているので遭うのだって命がけだ。初めて奴に遭遇したときに抱いたものは、なんだ普通の男の子じゃないかということだった。見た目だけは普通の何ら変哲のない子供で、しかも私と同じくらいの目線だったのだからなおの事、驚いた。好戦的に持ち上げられた薄い唇の端。綺麗な曲線だったが直ぐに、私を見つめたまま逸らさずに動かした。「君も敵なんだ?おじさんたちもえげつないよね、僕たちと同じ年くらいの人間を組織に組み込むんだから、さ。言っておくけどさ、僕らの邪魔をするならば君たちを容赦なく潰すよ」降伏するなら今のうちだよ、僕が飼い殺してあげるよ、飽きるまでの間だけどね、と。私は彼らを敵としてインプットしているけれども、此処まで奴らが歪んでいるとは思わなかったのだ。



きっと、世間にやられたことに比例しているのだ、彼らの歪みは。久方ぶりに街を徘徊すれば気持ちいい風がビルとビルの間をすり抜けてきて、ひどく心地よかった。それから皇帝と自称するサルの事を考える。放っておいたら寿命が短いから勝手に息絶えてくれる。でも、奴らは街を破壊して周ったりと害の有る存在だ、異分子を排除しなければならない。今はアンドロイドたちが警護しているが。私はたまにサルがとても哀れな男に思えるのだ。例えば、若しも私と同じように普通の子供ならば、皆と一緒に遊んで親兄弟と談笑をしてそれから時に恋なんかをして、自由に人生を謳歌できたのではないだろうか?だけど、同情はせども、所詮異なる存在であるのには変わりがないし、どちらかは消えなければいけないのかもしれない。だけど、セカンドステージチルドレン等は、自ら望んで成れる存在ではないのだ。(ある意味で選ばれた人間と言うのは間違いでないのかもしれない)



平穏だった空気が突如、銃声と女性の耳を劈くような悲鳴により崩れた。その悲鳴は背中の方からしているようで振り向く。直ぐに建物が崩壊するような音が聞こえ、バラバラと無残にも落ちていく残骸が散らばった。周りは混沌に包まれ、人々が押し合いながら逃げていく。私だけが、足を地面に縫い付けられたように動けなかった(若しかしたら、これも奴の力だったのかもしれない)。その騒ぎの中心は埃が舞い上がり一つシルエットが浮き上がっていた。また一つ銃声がして今度は、街ではなく何か機械が破損したような金属の音がした。「やぁ、逢いに来たよ」その声はまさしく、先ほどまで考えていた人物の声で、地面には動けない様にとのことだろう、この管轄を任されていた欠損したレイ・ルクの無残な姿が転がっていた。殺される、直感でそう思い私は緊急用にと渡されていた連絡用のそれを振るえる指先で起動させた。アルファでもいい、ベータでもいい、最悪ガンマでもいい、誰でもいいから!



助けて!一瞬だけ通じたそれはすぐさまに砂嵐に変わり、誰に通じたのかもわからなかった。向き直れば、サルの目が怪しく光っていて能力を使ったことは歴然だった。「あーあ、やめてくれないかな、邪魔者は要らないよ。折角二人きりに成れたんだからさ。もっと楽しまなきゃ」私は次に支給品の武器を手に取ろうとしたが遅かったようだ。瞬間移動でもしたのだろうか、いつのまにか目の前に居る彼の光線銃が私の腹に押し当てられていたのだ。「……お腹に風穴があいちゃうよ?いや、肉片も残らないかもな。この間メイアたちが改良していたから」「どうして」掠れた声が、ひり付く喉がそう言った。「……そうだなぁ。理由なんて大したものじゃないよ。君を飼殺したくなったからかな、僕は皇帝だ。欲しい物は何でも手に入れる」「嫌だ」



嫌だ。好きなように扱われて飼殺されてしまうなんて嫌だ。人間の尊厳も何もない、何故私だけがこんな目に遭わなければいけないのか?理不尽だ。理由だってこんなにアバウトなのに。「嫌?はははっ、笑わせるなぁ。君にさ、最初から拒否権はないんだよ。……今日は僕、単身で来たんだ、応援が来たら面倒だろう?」彼がそう言うと、体がぎこちなく動き始めた、私の意思ではない。明らかに体が奴に操られている。「さあ、行こうか」君の新しいお城(監獄)へ。



あとがき

普通のに物にしようかなーとも思ったのですが、傾向がお任せだったのでこうなりました。セカチルっこは歪んでいる方が好きです。私の書く百合が好きだと言ってくれて嬉しかったです、少しでもぬっぷー様のご希望に添えたら幸いです。此度は、四周年企画参加有難うございました。


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