全部キミがくれたから




(・ムサシ→←夢主で両片思いでほのぼの)


お互い好きだという事をわからずに、滑稽なことをしていると周りは言うかもしれないが本人たちは至って本気であった(ここだけの話、仲間内ではもう見ているこっちがむず痒いからさっさとくっついてほしいとの事だ)。ムサシは今日も本来はあまり入れてはならない、女子である名前を招き入れていた。名前はムサシが名前以外の女子を此処にあげないという事を知らなかったりする。ムサシもまた、それを言うのは気恥ずかしくて言ったことが無いので自分がどのように思われているのか不安に思う事があった。だが、恋人でもなんでもない、ただの仲間の関係柄なのにそのようなことを果たして言っていい物なのか躊躇われる。



「今日のムサシも、凄かったね」「いやいや、お前の助成があったからこそだ」「そんなことないよ、今日なんて私、背後を取られていたし、下手したらロストしていたかも」ロストなんてした日には、お互い悔いが残ってしまうなと思うだろう。いつもこうしてたたえ合うことでお互い共通の時間を少しでも長く作れるので、こうした会話がなされる。私的なことも話したりする程度には仲がいいのだが、如何せん何処まで話していいのかがお互いにわからない。



女の子同士、または男の子同士なら許されるトーク、ボーダーであっても異性であればそれは通用しないかもしれない。だからこそ話される内容は常に無難な物で地雷を踏まない。踏み入った事情を本当はお互いが知りたかった。どんな子が好み?だとか。そんな根本的な物すらもわからないのだ。これではいけないと流石にムサシも思っている。何故好いている女の好みもわからないのだ。これでは男がすたるどころの話ではない。大体、このような物は男が進める物だと昔から大体決まっているのだと自分を奮起させた。「そ、その、つかぬ事を聞くが……どんな奴が、その好み、だ?」奮起させたはいいけれど言葉が掠れてしまった。これでは格好がつかない、聞き返されてみろ、何て答えればいい?お前の好みはどんな奴だってまた同じことを言えるものか。



だけど、名前は聞き返してこなかった。かわりに返答をよこした。「そうだね……えっと、頼れる人がいいよね、私が危なくなっても助けに来てくれる人とか、」名前は暗にムサシの事を示していたのだが、ムサシは誰だかわからなかった。ピンチの時には成るべく駆けつけるようにしては居るが、小隊が実は違う。だから、常に一緒に居て行動を共にしているのはムサシではないし、小隊を束ねる物もまた、違う。「……そ、そうか。俺も成るべく、名前のピンチに駆けつけられるようになりたいものだ」「……今日だって救ってくれたじゃないの、ムサシは」



それ以上は言えなかった。今の関係をぶち壊すのは名前もまた恐れている事態だった。もう二度とムサシの部屋に来て、戦功を称えあうことも他愛のない話も出来ないだ。そんなの嫌だと、ムサシが好きなんだよということは口の中で殺したまま出てこなかった。ただ、微笑みに昇華されるのみである。今日もやはり、二人の口から好きだとかそれを思わせる言葉は出てこないらしい。両片思いだと気付くのもこのままのペースだと数か月、いや、酷いと数年単位に成ってしまうかもしれない。だけど、二人は幸せそうに笑い合った。


title リコリスの花束を


あとがき
いつも有難うございます〜!書いている途中で、何故かこっちが照れていました。ムサシ君の性格把握しようと捕まえに行こうとしたら既に仲間でした。呼び出して会話したりして少しでも把握しようとしたのですが…、兎に角今回も有難うございました!楽しかったです〜。


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