役得って奴ですよ。




(・万能坂で光良寄りの逆ハー)



万能坂に派遣されたと決まった時の私の絶望を誰が知ろうか。あの長い坂道、あり得ない怖いトンネルもあるじゃないか。帰りたい気持ちで一杯だったのに聖帝の命令には、逆らえないわけで。例のトリオと共に派遣は決まってしまったのでした、私はこの癖のあるトリオが嫌いと言うわけではないのだが、どうにも、ほら……癖があって扱いにくい人たちなので。光良はよく大笑いしているし、磯崎はめっちゃ怖いし、篠山は何考えているかわからないわで。此処に来て、出逢った気さくな毒島に助けを求めるレベルだった。



因みに、篠山は何を考えているかわからないとは言え、とても優しい。その点、一番救われているかもしれない。今日も選手の為の荷物を万能坂の一番下から運んでいたら殆どを持ってくれて、のぼってくれた。篠山マジ天使。別に押し付けるなどと言うつもりは無かったのだけど、マネージャーにこんなに押し付けるのと、万能坂をのぼれなんて、酷すぎると言ってくれた。磯崎は冷たい。「べ、別にお前の為とかじゃないんだからな!」とかツンデレの王道を行くような言動をしながら私の隣をキープしたりして来る。多分、その内骨折られる(主に女子に)。光良は察してほしい、よく笑う男だ。


現在、登校中。車道側は磯崎が歩いてくれている。反対側には光良が居る。私は両隣を占拠されている状態である。べ、別にトンネルの噂が怖いとかそんなんじゃあないんだからね。車はたまに車で登校する生徒が利用する程度なので、頻度が少ないのだが、如何せん本当に何か出そうで怖い。後ろから「ばぁっ!」とか言う声がしてひぃい!とあられもない声を上げて光良に抱き着いてしまった。マジで何かが出たのかと思った。「うわぁっ?!」光良も吃驚したようで私よりも形に成っている悲鳴を上げた。が、これは私が抱き着いたことによるダメージの様で、後ろのいたずらっ子毒島の仕業ではないらしい。



「おっすー!名前、磯崎、光良、驚いたか〜?」「驚いたわボケ!禿ろ、白髪!死ね!」暴言吐きまくりの磯崎はどうやら、マジでビビったようでちょっと涙が浮かんでいた。何それ、可愛い!と思ったのだけど、それ言ったら女子じゃなくて磯崎本人に骨を折られかねないので、やめておいた。光良に抱き着いたまま前に前に徐々に移動していたら磯崎と毒島の華麗な連携プレイにより、引きはがされた。光良は面白くなさそうに拗ねていたが。何故、この華麗な連携プレイを試合の時に発揮しないのだろうと、本当に思った。こういう時ばっかり仲がいいので、本当に万能坂は支配されているのかわからない。



「っつたく、朝から気分が悪いぜー、なんで光良の野郎に抱き着くんだか。隣には俺も居たじゃねえか」「いや、たまたま、反射的に」「役得って奴ぅ?!あはははっ!」トンネルに朝から耳障りな光良の笑い声が幾重にも反響して聞こえてきた。キンキンする!「うるせっ!」「毎日抱き着いてもいいんだよォ?俺の隣あけておくしぃ?あはっ!」「……脅かすんじゃあなかったな、ちょっとビビって可愛い名前を拝もうかなというのがあだに成ったか」なんだ可愛いって。どうせ、普段は可愛げのない鬼マネージャーですよ。



「ていうか、私より磯崎の方がビビっていなかった?」ちょっと涙目だったじゃんって所には触れずに言うと、磯崎が気のせいだ!と口をとがらせて言った。やっぱり所詮は一年生、まだまだ可愛いということか。毒島がガシガシと乱暴に頭をかいた。「磯崎のんな新たな一面見てもしゃあねぇよ。どうせなら名前の涙目が見たかったぜ」あ、涙目とか言っちゃったよ。この人。磯崎が怒って毒島を追い回し始めて、光良と私が取り残された。「……あはっ、なんだかわからないけど、また役得って奴ゥ?!あはっ、俺ってラッキーだよね!一緒にいこ!」光良がしっかりと私の手を握ってくれた。汗ばんだ手だけど何故か頼れる手に感じたのは此処だけの内緒だ!



あとがき
逆ハーはあまり得意分野じゃないので、よく練習がてら書くのですが、上達する気がしません……。万能坂の設定を生かそうと頑張ったのですが……生かし切れていない気がします。


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