僕らの在り方




(・古城タケルで共依存)



僕は彼女が居なくては駄目で、彼女は僕が居なければ駄目に成る。これを世の偉い人は共依存と呼び、過度な物はあまりよろしくないと言った。慎重に名前の使っている破損の激しいLBXの修繕を行う。乱暴なことは極力しないでほしいと頼んでいるのだけれど……、今回の事はあれだ「向こうから仕掛けてきて反応に遅れてしまった」というわけで、こちら側から仕掛けにいったわけではないらしい。所謂、事故と言うわけである。僕は機体を修理する時には必ず、僕の部屋で名前を待たせている。僕の部屋は面白い物なんて無いし、楽しくないだろうけれど、それでも待っていてくれる。雑誌なんかを見て過ごしている。すっかり、此処に馴染んでしまっている。今はまるでベッドと同化したように寝転がっている。此処にはタケルがいるから、と今にも入眠してしまいそうな眼で僕の手の動きを見つめていた。



僕は意外と利己主義者である。名前の機体はいつも特別に時間をかけている。次の
ウォータイムの場所柄どれを使えば適切かとか、欠陥はないか、完璧か?全てを確認してからようやく、他の仲間たちの修理に精を出す。これが終わる頃には名前と愛を囁き合ったり、その身を寄せ合ったりできるのだろうか。名前が新品同然とまではいかないが、それなりに綺麗に成ったLBXを見て、歓喜した。ああ、僕は彼女のこの笑顔が見たかったのだ。これならば、次のウォータイムも何とか出ることができるだろう。「だいぶ良くなったけど、あまり激しく動かすと、ちょっとまずいかな。あくまで応急処置だからね」「はぁーい」



「あまり無茶なことはしないでよ」ベッドに僕も転がって向きう形で抱きしめた。幸いなことに、同室の人間はいない。所謂、二人きりの時間と言う奴だ。本来は、部屋の行き来すらも駄目なのだが、皆、黙認していたりする。「名前が居なくなったら僕はどうしたらいいのか、わからない」一時たりとも離れたくない。それは名前も同じなのか僕の胸に顔をうずめて僕に足を絡めて、手を回した。「私だってどうしたらいいか、わからないよ」仲間は名前と若しも離れてしまったらどうするのだ、とたとえ話を僕に振るけれども、そのたとえ話ですら僕は不愉快だ。想像するだけで吐き気がして眩暈がする、それから動悸と疼痛。随分と重症だと我ながらに思う、ずっと保健室に縛り付けられたままの方がいいんじゃないかなんて、治る病気でもないのに。



「せめて、僕と同じメカニックならなぁ。参加しなくていいのに」「私にそんな技術ないもの、タケルとは違うよ。私ってばその辺ダメダメだし」頑張っても頑張ってもタケルのように細かい作業とか出来ないから、戦うしかないと諦観しきったように呟いた。「でも、ロストさせられなければいいだけの話でしょう」「いざとなったら、他の人を盾にしてでも、生き延びてよ」なんて、ずるいんだろう。僕は敵国の人間でもないのに、名前が絡むとこんなことを平然とした顔で言ってのけてしまう。こんなに嵌らなければよかったのに。こんなに、依存しなければよかったのに。



「共依存は行き過ぎると悪いことだと言われたよ」「誰に?」「カゲトラ」あの人は真面目で優等生だから。なんて悪戯に笑うけれど他の男の名前が出てくること自体が僕には、好ましい事ではなかった。ああ、なんて心の狭い男なのだろう、僕は。「別に悪い事じゃないんじゃないかな、って私は思うの」「僕と同じだもんね」「だってさ、お互いが依存し合っていてもさ、心が離れたりしなければさ、問題なんてあまりないじゃあないの」僕たちは補い合って生きているだけ、そう、右足と左足のようなものだ。お互い合意の上で、僕らは抱きしめあって、首を絞めあっているのだ。ねぇ、それでも、僕らの有り方って間違っていると思う?今日も僕らは、お互いの首を絞めている。



あとがき
共依存と聞くとDVがつい浮かんでしまうのですが、タケル君には暴力が心底似合わないと思ったのと暴力は多分望んでいないだろうなとこの形で。有難うございました。


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