終幕はいつだって喜劇
  



私は女の子をやめてもいいと思う時がある、それはバネッサが私をそういう目線で見てくれないからだ。男の子に憧れたことはなかったし、男の子の様に戦隊物に夢中に成ることは一度も無かった。それでも、女の子をやめてもいい。バネッサに見て貰えるのならば、女の子をやめてもいい。男の子に成って、バネッサって低い声の変わり始めた男の子の声で呼んで、彼女に意識して貰いたい。彼女の心に根付き息づきたい。贅沢なのだろうか、



だけど、叶わぬ恋。どうせ、通じないのならばもういっそ、お友達のままでもいい。笑い合って、喋りあって、一緒にスワローでパフェなんか食べたり、時に一緒にセカンドワールドで背中合わせの共闘して。ただ、何て事のない日々を過ごせればそれでいい。そう、心の中では思うようにしている。勿論、本当にそれでいいのかと、誰かに詰問されれば、嘘だと言わざるを得ないであろう。(だって、私はそれ以上を本当は望んでいる、そんなの綺麗事だ、綺麗事だ、)褐色の色の肌にキスを落として、唇、頬、額、胸に口づけたいと思っている。潤んだ瞳に極上のキスを授けたいと思う。(なんて邪なのだろう!なんて、邪な友人なのだろう!)



バネッサは私の気持ちなんか知らないんだろうなぁ。同じ部屋に押し込められている私の気持ちなんてちっともさっぱりわからないんだろうなぁ。ただわかることは、何処か変ってくらいだろうな。カモフラージュに誰か男の子を好きだと言ってみようかな、バネッサは校則がどうとかいって険しい顔をするだろうか?それとも、ホッとするのだろうか(知らないのにね、どうしてホッとするんだろうね)。そろそろとそれは忍び足でやってくる。寝息を立てて眠るバネッサの枕元に膝立ちに成って、彼女の寝顔を見つめる。



キス、したい。そう思った、今日に限ってそれは抑えられなかった。たがが外れた様に私はバネッサの額に唇をそっと落とした。ああ、愛しいバネッサ、貴女の為ならば女の子をやめてもいいのに!親友なんて立ち位置じゃ我慢できない、そんなの嫌!バネッサがの瞼が微動していて、私はその時初めて絶望を知った。初めから覚醒していたかのように目をぱっちりと開けてムクリと起き上って私を見下したように睥睨した。「お前は」「ばねっさ、ちが、う」助けて、親友の立ち位置も奪われてしまうよ。そこら辺の塵芥でも見るような蔑んだ目で見てくる。「部屋のチェンジを頼まないとな。もう、名前なんて、友達でもなんでもない」これが結末?終幕?エンディング?こんな酷い結末望んでいないよ、バネッサ、バネッサ……。ごめんなさいごめんなさい、友達でいいから許してよ、もう、しない、から、

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