夢の続きは、




(夢主が死ぬ)


ガシャン、鎧と大剣の落ちる音がした。崩れ落ちた、名前の足は真っ赤に染まっていて、ボタボタ鎧の隙間から零れ落ちて行って地面を赤く染め上げていた。泣きそうな声で言った。「もう、次からの戦、出られないなぁ」って何処か遠い目で言った。トウ艾はグッと唇を引き結んでその後に息を吸い込んで「そんなことなはない、名前殿は強いからな、きっと足だって直ぐに治る」トウ艾の言葉にまるで説得力はなかったけれどカラカラ名前が笑って見せた。「有難う、トウ艾殿、次の戦はこの無念を晴らしたいよ」笑ってはいるのに泣きそうなのはなんでなんだろう。トウ艾は鎧を着こんで重たいはずの名前の体を易々とおんぶをした。



「だが、その前に治療せねばな。地図によると一番近い場所はこちらだ」そう言って駆け出した。本当は何もかもわかっているのに。トウ艾の逞しい背中に愛おしさを覚えながらも名前が呟いた。「トウ艾殿有難う」「?何がだ」「こんな私を助けようとしてくれて、」それから苦痛に歪み荒げる息。「……名前殿、こんな時に言うべきではないが、婚儀を結ばないか?」「へ」鳩が豆鉄砲を食らったかのように面食らっていた。名前が遂に泣きだした。「ああ、そうだなぁ……、」「この足が治ったら地図に書いた美味しい甘味の店でも周ろう」「ああ、楽しみだなぁ」



「それから、屋敷は名前殿の好きな物で埋め尽くそう。自分は女人の好む物はわからないから、何でも買っていい。それから、婚儀は帰ったら直ぐにでも結ぼう」「うん……素敵だね」走る速度は落ちることは無かった。それどころか急いでいるのか、ドンドンと急ぎ足に成っていた。重たい鎧なんてトウ艾には無いに等しかったのかもしれない、いや、それよりも。「そうだ、自分は女人に贈り物などしたことないが、翡翠等も贈りたい」「あは、」「足が治らなくて不自由な時は自分を呼んでくれ。そうだ、子供は欲しいか?」「うん……、欲しいな」もうすぐで拠点が見えると言う所で名前が虫の息で呟いた。「もう駄目だ、血が流れすぎている。トウ艾殿、夢の続きは桃源郷で見るよ。有難う、有難う、トウ艾殿」そう言って、急にズシリと重たくなった名前、慌てて見つめれば、瞳は鈍色の空を見つめていて、一筋の涙を零していた。「名前殿、……名前殿、冗談はよしてくれ。あれは夢の話なんかじゃあない……」名前の涙を拭って瞼をとざせば、酷く安らかな顔をしていた。夢の話をしようじゃないか。


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