粗雑な剣と盾




死ネタ


たかが粗雑に作られた盾や剣の名を一々覚えておいででしょうか。私は、貴方の盾でありまた剣でありたい。安閑な日々は中々訪れない。それでも、私は呂布様を守る剣であり盾でありたい。これは、可哀想な身分の低い女の恋だ。だから、せめて身を守る物に成りたいのだ。自己満足かもしれない、それでも毎日鍛錬は欠かさず、己を磨いていた。人中の呂布様の瞳には私なぞ映っていないかもしれない。それでもいいのです。これは自分勝手な思慕であるから。貴方は責任を感じる必要はないのです。鬼神と呼ばれる呂布様の隣に居られること、それこそが私にとって僥倖な事でありますから。



戦況は絶望的だった。逃げ出す兵も居たし、私の制止を聞かずに降伏する仲間を散々見てきた。最早、これは負け戦である。でも呂布様は毅然とした態度を崩さずに群がる兵を薙ぎ払っていた。額には粒となった汗がポタポタと落ちていった。私は畏れ多くながらも呂布様の背後の敵を薙ぎ払っていた。切っても切っても沸いてくる的はまるで、害虫の様で肌を泡立てさせた。このまま、一方的に押されて居てはまずい。「何っ?!水計だと?!」呂布様が顔を一瞬強張らせた。ああ、今度こそ最後なのかもしれない、と悟った。不意に伝令兵が慌てた様に「侯成等が陳宮殿を捕縛し裏切ったとの事」「己ぇ!侯成っ!!」怒りをあらわにし、青筋を立てる呂布殿。



もう体力の限界であった。呂布様もそれは同じはずなのに、まだもがいている。捕えられた我々は、手を後ろに縛られ、曹操は品定めをするようにまたは舐めるように張遼殿と私、それから呂布様を見てふむ、と一度頷き張遼殿を別の場所に連れて行った。「お前の武勇を使ってみたいものよう……」曹操が迷うように呂布を見ている。だが、隣に居た劉備と言う男が進言した。「この男は裏切者です。このものを使うのは些か……」劉備の一言で決心を固めたようで曹操は一言、呂布様に「惜しい人材であったな」とだけ述べた。それは死刑宣告であった。



私は、曹操に息がかかるほどの間近で見られて嫌悪感を隠せなかった。「こちらの女子は殺すのは惜しいな、血と泥を払えば美女であろう」そう言って荒縄を解いた。私は懐に隠していた、刃をぎらつかせ、曹操に向けることなく喉元に宛て自刃した。プシュッと大量の血がその場を汚した。呂布様は驚きの声をあげて「名前!!」と叫んだ。ああ、粗雑に作られた剣と盾の名を、お覚えでしたか。呂布様、


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