遺伝子を半分こ




その他(人名等)は陳宮との子供。男の子です、ただの子煩悩夢主。



「甘い!」ガキィーン、と鉄と鉄のぶつかり合う音が鳴り響き獲物がクルクル円を描きながら地面に最後は突き刺さって、その他(人名等)が尻餅をついた。名前はふぅ、と溜息を吐いて獲物を握りしめたまま首元に当てその他(人名等)にいった。「敵将、討ち取ったり。……これでは、次の戦に出すのは不安であるな。いいか?これは私がお前の母だから、済んだことであり、お前が戦場に出れば首が飛んでいるところなのだぞ」言い聞かせるように、名前が言うがその他(人名等)は涙の膜をその澄んだまだ穢れない瞳に作り頷いた。名前の稽古はいつも、辛い物であったが自分を思っての物だとわかっているつもりだった。されど、辛く当たられるのは慣れなかった。



「名前、少々、少々、手荒ではないですかなぁ?」陳宮がとてとて寄ってきてはくるくる周る(或いは踊り子が舞う)ように名前の伺いこむように周りをうろついた。いつもは愛くるしく思う名前だが、この時ばかりは煩わしく感じた。何せ戦前で気が立っている、それに息子であるその他(人名等)が未熟ながら戦場に出たがっているとなれば尚更である。「……何を言うか!その他(人名等)が死んだらどうするんだ!」イラついた様に歩みを速めながら言えば、陳宮も押し黙ってしまった。だが、それも一瞬であった。この舌はよく喋る、一体何が彼をこう掻き立てているのか知らないが、一度話し出せば中々止まらない。「ですが、ですが、その他(人名等)も男ですぞ、戦場に立てば必ずや、必ずや、戦功をあげましょうぞ。何せ、私の知性と名前の武勇を併せ持った愛の結晶ですぞ!」「どうだかな……、あれはお前と同じように策を練っている方がいい」「果たして、果たしてそうですかな。知将に成りえる存在だと、私は思っていますぞ」そう言って、口髭を撫で付けた。



「……、明日の戦、どうしてもその他(人名等)はでたいと言っているのか?」陳宮は目をまあるくさせて、少し口を半開きにして間抜けな顔をしていたが、やがてしゃんとしていつもの何かを企んでいるような軍師の顔をした。「ええ、ええ、出たがっていますとも。それも前線で母上と戦功を立てるのだと、妙に期待しておりましたぞ」「……はぁ、何故止めぬ。公台よ……、あれを前線に出したくない。お前はその他(人名等)が死んでもよいのか?私は、私は……愛した男、公台との子であるその他(人名等)に死なれたくないのだぞ。いくら子をもうけようども、その他(人名等)は一人だ、この世にその他(人名等)は二人はいないのだぞ」顔を片手で覆い、これが私の本音であると陳宮に伝えた。ふむふむ、と納得したように陳宮は先に、その他(人名等)と家で待っていますぞと伝えてとてとて姿を消してしまった。



帰れば陳宮とその他(人名等)は竹簡やら何やら散乱させた状態で何かを言い合っていた。どうやら、明日の戦の策をもう一度言い合っているらしいようで顔は真剣そのものであった。「父上、此処に俺は伏兵が潜んでいると思います」「そうでしょうな、そうでしょうなぁ。ですが、迂回し此処から降り、敵を逆に奇襲してしまえば一網打尽にできましょうぞ」「成る程!流石父上!で、此処の拠点はやはり兵糧があるので、火計で兵糧を断ってしまうのが……」話題は尽きる事のない泉の様で、こんこんとわきだしてくる。名前はそれを見て矢張り軍師の父である陳宮の血を色濃く継いでいるのだなと改めて思った。そして、矢張り前線には出したくないと思った。



星の綺麗な晩であった、まだこの大陸も汚染されておらず、煌々と月が薄ぼんやりと鼠色の雲に少しだけ照れるように隠れていた。「母上、酒を飲みませぬか?」上等な物を父上から頂いたので、是非母上と飲むようにと伝えられたのです、とぎこちなく酒を持ってきたその他(人名等)の顔は強張っていた。それは恐らく緊張から来るもので明日の戦の事もあるのだろう、そして、名前の明日の決定もあったのだろう。「……ほう、これは確かに上等だな、何処で手に入れたのかは些か疑問であるが、まあいい」そう言って、隣に座るように名前が促す。月見酒と言った所か。「……お前も、気付けば酒が飲める年に成っていたのだな」「はい、母上。もう三年も前から飲めますよ」そう言われると、名前も押し黙ってしまう。いつのまにか子供は大人に成長していたのだ。そして、自立してこの国の為、父母の為に戦に出たいと言っているのだ。



お酌をするその他(人名等)に一言礼をぶっきらぼうに言いながら問うた。「明日の戦はでたいか、その他(人名等)よ」「勿論です、母上の様に強くは成れないけれど」「今日見ていたが、お前は策を練る方が好きじゃないのか?」「それは、戦に必要だからです。母上の様にお強い方でも、策にかかれば下手したら命を落とす。そうならないために兵法も勉強しているだけです」……名前はその他(人名等)から視線を落とすと「そうか。わかった。明日お前を前線に出してやろう。初陣だから無理はせず、敵の挑発には乗るな、単独行動は禁止だ、私のすぐ近くで戦え、怪我をしたら本陣に戻れ。いいな」それからポンと頭を撫で付けると母上俺はもう子供じゃあないんですよと、嬉しそうにそのまま撫でられたまま、苦笑した。


title Mr.RUSSO


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