葡萄と君と




最近曹丕様は、葡萄なるものに嵌っているらしい。一武将である、私は桃や蜜柑等を食べては少ししかめっ面をするのだった。「この蜜柑も甘く等ないな」吐き捨てる様に言えば、曹丕様がニヤリと口角を持ち上げて笑っていた。悪い笑みが似合うお人だなと思っていたが、それを言えば殺されるだろうと思い、この思いは封じ込めることにした。封をすると、曹丕様が先程から美味しいと言って食べる葡萄が気に成ってしまった。「そんなに美味しいのですか?」「ああ、美味いぞ」一房もう、食べてしまいそうだった。それ程いたく気に入っているらしい。ジィと穴が開きそうな程に見つめていると曹丕様が葡萄を一粒だけもいだ。



「ほら。口をあけろ。さっきから物欲しげに見られていては食い辛い」「え、でも」それって、あーん、しろってことだよね?!むっちゃ恥ずかしいんですけど!とか乙女心爆発させていたが、曹丕様が急かしてくる。「早くしろ。食べたくはないのか、葡萄を」葡萄は食べたい!私は思い切って小さく口を開けた。「もっと開けろ、入れづらいだろう」「あ、あーん」そう言って口を大きく開けると丸い粒が入ってきた。ゆっくりと咀嚼する。甘みが口の中に広がってほっぺたが落ちそうになるくらい癖に成りそうだった。私が余程幸せそうな顔をしていたのだろう曹丕様がもう一粒、手に取って「口をあけろ」と言うので今度は遠慮なしに口を開けた。



「まるで雛鳥に餌をあげているみたいだな。成る程、愛らしいぞ……」そう言って曹丕様の目が愛おしげに細められた。そういえば、先程から一粒一粒私に分け与えているけれど曹丕様はもういいのだろうか?雛鳥って言われたのは生まれてこのかた初めてだったが悪い気はしなかった。葡萄は美味しい物だ、大好きだ。それと、普段鋭く切っ先の様に冷たい曹丕様の優しげな瞳も。


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