大いなる誤算




(・休日に男性が好みそうなショップで買い物の夢主を(質問攻め)からかう。誰かに片思いしている、ショップは誰かにプレゼントする為。落ちお任せ、両想い天河原)


「あれって、名前じゃない〜?」そう最初に言い出したのは人一倍目ざとい西野空だった。一般家庭にはないだろう大きな窓越しに、窓に背を向けて会計を済ませたであろう一人の女の子を指差した。指をさすのは止めろ、失礼だ。人違いかもしれないだろうと喜多に手を払われてようやく西野空は手を下した。「なんだよぉ、相手に見えていないじゃん〜?てか、此処、男性向けじゃん?なんで男物みているんだろぉ、好きなのかなぁ?男物ぉ。名前そんな風に見えないけどねぇ、」って暫くは喜多に怒られて不貞腐れていたが、直ぐに元気を取り戻した。そして、此処が男性向けのショップだという事に触れた。星降があまり気にせずに「あ、そういえば、今日持ち合わせあるんだ。カフス買わないと」とさっさと自動ドアを潜り抜けて入って行ってしまったのを見て、面白そう!と隼総達と一緒に成って入って行ってしまった。相変わらず星降はマイペースである。出遅れたのは喜多だった。指摘していたのと、そんなことするのは常識はずれだと思っていたからだ。



「やっほー、名前〜」西野空の間延びした声にビクゥと体が、面白いほどに跳ね上がってそれから、機械のようにぎこちない動作で四人の居る空間を見てまさかみつかるなんて想定外のハプニングだと眉間に細かい皺を寄せた。名字の顔を確認し、本人だとわかったところでそこからは怒涛の質問攻め、ラッシュであった。「ねぇねぇ、何買っていたのぉ?」「男物に興味、有る……とか?俺、女物も、結構良い物あると思うし、つけることあるから、気持ち、少しわかるかも」「へぇー?ま、俺も口紅とか塗っているからあんま人の事いえねぇけど……、お前あんま似合わないわ」「……え、っと……、自分で使うのか?名前」ただただ、名字は不機嫌そう、もしくは困ったように溜息をつくばかりだった。



「ストップストップー。私は一人だから、そんな一気に言われてもわからないし!」「えぇ〜。つまんなーい」大体何を買ったのさぁ、と覗き込もうとすると名字が後ろ手にそれを隠してしまった。どうやら見られたくないらしかった。「あれあれぇ?僕と名前の仲はそんなに悪くないでしょぉ?見せてくれてもいいじゃん〜?冷たい〜、僕はこーんなに名前と仲良いのにさぁ」酷いよぉ、僕のこと遊びだったの?って泣き真似をしてみせるが、これも挑発的に映ってしまうのが、西野空の凄い所である。段々イラついて来たであろう隼総に小突かれてそれもようやく終わったが、未だに納得いっていない模様であった。「……西野空は相変わらず馬鹿野空。男物なんて、使うの?俺にこっそり見せてよ」そういって、隠したものを取り上げようとするので必死に防衛を行う。



「こら、星降。無理やり、取ろうとするな!俺も気にはなるけど、そんなのは名前の自由だろう」全くと呆れながらもやはり気にはなるのだろう。そわそわしていた、そんな中で隼総が至って冷静に声をあげた。皆して一斉に隼総に視線が集まった。「なぁ。前に星降が欲しがっていた物がなくなっているんだけど。誰かに買われたんじゃね?」「え、あ、……本当だ、」星降が残念そうにしょげたような声を出して落胆の意思を見せた。喜多が長身の彼の肩をポンと叩いて慰めた。「仕方ないだろう、あの時は持ち合わせなかったんだ」「……うん。西野空は利子とか取りそうだし、隼総も喜多も持ち合わせなかったみたいだしね、」残念だと商品が置かれていただろう、空間を見つめて溜息をついた。「在庫とかあるのかよ?」「無いってさ」「……取り寄せて貰えばいいだろぉ?大体ぃ、星降に貸して絶対に返ってくるって保障あったわけぇ?僕のせいじゃないしぃ」「……ハァ、残念。結構気に入っていたのにな、あのカフス」「一応言うけど、校則では駄目なんだぞ、星降」といってもあの学校では校則も何もないのだが。



星降がお店の若いお洒落なお兄さんを捕まえて、取り寄せを頼もうとした時だった。名字が待って!と星降の服を強く掴んだ。「え、なに?」「あ、あのさ!……香宮夜の言っていたカフス……、その私が買ったから、取り寄せなくて、いいよ」「?」星降は名字の言ったことを今一噛み砕けなかったのだが、当の本人は必死そのものであった。周りの反応も多様である。喜多なんかはきょとんとしているし、西野空と隼総はニヤニヤ嫌らしい純粋とは全く言えない笑顔を浮かべている。「……どういうこと?」「……えっと、香宮夜がその、前にこのカフス欲しがっているって聞いて、その……香宮夜にあげようと思って。私、香宮夜が」そっと人に渡すために軽いラッピングの施されたものを差し出して言葉を詰まらせた。星降も察したように言わなくていいと制した。



「俺たちお邪魔みたいだぜ、行こう。キャプテン、西野空。後でたっぷり聞くことにするからな」「ああ、そうしてくれる?」隼総がそこから空気を読んだように切り出して西野空の首根っこを掴まえた。喜多が「え、なんでだ?星降を置いていくのか?」と純粋な疑問をぶつけた。西野空は「えー、やだぁあ、ぼくぅもっと青春しているところ見ていたいよぉ」なんて文句を言っていたが引きずられるようにしてドアを潜り抜け退散していった。残った星降と名字は気まずい空気が流れていたが、星降がやがて口元に小さく弧を描いた。「有難う。大事にする、これから毎日つけるから」それから、西野空たちにも自慢してやる。と少し誇らしげに言った。


あとがき

落ちを迷いました。正直四人とも好きなので誰でもいいなぁと思っていたんですが、隼総は他の方から頂いていたので星降君にしてみました。アクセサリーというと何となくカフスを付けている星降かなぁ、と思ったのです。天河原が好きなので、嬉しかったです、有難うございました。


title 箱庭


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