それが愛だとは言わないでよ、絶対




(龍崎に監禁される)



目が醒めた時に暗闇が広がっていてそこの中にぼんやりと浮かんだ輪郭と色素の薄い髪の毛におや、と思ったものだ。最後の記憶は龍崎に対して酷い事を言ってしまったなあ、ということだけであった。心なしか後頭部がズキンズキンと痛む気がする、いや、きっと気ではない痛いのだ。「お目覚めか?お早う、名前」声がコロコロ転がっていって、ふいに跳ねる。それは嬉しそうでもあり、同時に楽しそうでもある。兎に角、愉悦を含んだものであったのは間違えようが無かった。「何、龍崎、」先ほどから、龍崎龍崎と呼んでいるが、私たちの元の関係は恋人である。ただ、それは少し前に上書きされてしまった。



私はレジスタンスの人間で、龍崎は隠していたのであろう、フィフスセクターの人間だったのである。つまりは敵対者であり、私たちは本来、そんな関係を結ぶはずも無かったのである。だけど、今日?はたまた昨日か一昨日かの試合で惜しげも無く化身を晒けだしたせいもあり、龍崎を含む数名がフィフスセクターの人間だと露呈したのであった。勿論、知っていたら付き合ったりなどしなかったし、そんな卑怯な奴らと友達にも成りたくなかったかもしれない。ただ、上辺だけの関係で済ませたはずなのに。段々と意識がはっきりしてくる、靄がかかっていたような記憶がドンドンと蘇ってくる。そういえば、酷い事と言ったが私は追放されるであろう龍崎に、何て言ったっけ。一つずつ整理していこう。



「俺がフィフスセクターのシードでもあんたは変わらず俺を、愛してくれるよな?俺、追放みたいだけど、あんたは傍に居てくれるよな?」有無を言わさない、若しくは同意以外の言葉は求めていませんと言った風ないつもの感じの口調なのに、龍崎の奴が珍しく自信無さげな風に見えたものだから私は冷たく、言い放ったのだ。「龍崎がシードなら私は好きじゃない。傍にだって、居たくない」龍崎は私を裏切っていたも同然だ。シードじゃないって言ってくれたのに、全てが嘘だったなんて。龍崎なんて好きじゃない、好きじゃないよ。自分に言い聞かせるように言った。



頭が痛い、龍崎が狂ったようにケタケタこらえきれずに笑っている。頭でもぶつけたのだろうかと少し心配して手を伸ばそうとしたが、やめた。この状態、きっと私の方が頭をぶつけたに違いない。「あたまいたい、」「おっと、強くやりすぎたか?ははははっ、此処まで運ぶの苦労したから、少しくらいはいいだろう?」「……やっぱり、龍崎がやったんだ」どうやら龍崎が私を攻撃したと考えていいらしい。だけど、その瞬間は思い出せない、龍崎が色々な感情の入り混じった顔をしていて、それから嘘だろ……と呟いたのまでは覚えている。「当たり前だろう、俺は、あんたがレジスタンスの人間でも受け入れたのに、あんただけ俺を受け入れないだなんて可笑しな話だ。あんたも俺を受け入れなきゃいけない、あんただけが俺を拒絶するなんて絶対に可笑しい」あり得ない、有っちゃいけないんだ。俺はあんたを愛しているし、あんたもそうなんだ。そうじゃなきゃいけない、そういって、髪をぐしゃぐしゃとかき上げた。



「だから、あんたの気が変わるまで此処にずーっと居て貰うんだ、あんたの好きな物なんでも持ってきてやるよ」「どういう意味」此処にずーっとって、嫌だよ。此処とっても暗いし。大体此処は何処よ。皆目見当もつかない、窓が見当たらないしお日様や木々のざわめきも聞こえない。どうやら地下みたいだ。けど何処かまでは把握できない、龍崎の部屋には行ったことあるけど、こんな所ではなかったはずだし、そもそも龍崎の部屋なら脱出も此処まで困難ではないだろう。扉は鉄製で頑丈そうだし、冷たく閉ざされて此処を隔絶している。世界は隔たれている。「どうもこうも教えてやっただろう。あんたは馬鹿だ、あそこで頷いてくれれば俺だって此処までしようなんて思わなかったのになあ」「……龍崎、頭可笑しいよ」「はははっ、頭が可笑しい?……、可笑しいのはあんただ。俺はただ、昔のあんたを取り戻したいだけなんだ。俺を愛してくれた昔のあんたを。なあ、龍崎って呼ぶのやめろよ、前みたいに皇児って呼んでくれよ名前」目の前のこいつは誰だ、龍崎に似ているのに、頭が少し可笑しくて。考えるのを放棄したくなった。龍崎に今謝ったら許してくれるかな?きっと、無理だろうな。



あとがき

れいわ様、いつも仲良くしてくださり有難うございます〜。監禁と言われたので、病んでいる龍崎を無駄に目指しました。ただ、あんまり監禁という感じがしなくなってしまった気がします。折角素敵なお題を頂いたのに生かし切れず申し訳なかったです。企画参加有難うございました!


title エナメル


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