支配下の少女




(・ガルシャアに拉致された夢主が逃げ出して連れ戻されてお仕置きされる。15推)


グルル、ル。獣の呻く声が聞こえる。それは快楽を含む物である。いつもそれは恐ろしい物で、なんで私がこんな目に遭わなければならないのだと、涙を流した。この化け物に浚われて、数日の間はとてももがいたのを覚えている、化け物を前にして何度も暴れたし、逃げ出そうとした。何故ならこの恐ろしい狼のような風貌をした男が、私を浚った初日から酷い行為を強要してきたからである。話が通じないのである。いや、通じてはいる。相手が話すのも同じ日本語なのだから通じてはいるのだ。だけど、噛み合わない。こんなことをしないでくれ、と泣いても宥めすかしても無駄なのである。だから、私は逃げ出す。



ハァハァ、荒れた息を整える。酷く水が飲みたくて仕方がなかった。あそこにいれば水や食料は手に入るし、与えて貰える。だけども、なんで好きでもない男と行為に及ばねばならないのかとか理不尽だとか思ってしまって、嫌なのだ。兎に角あそこにいるのはもう嫌なのだ。今日は化け物の眠っている間に腕から抜け出した。奴はいつも私を抱き枕のように使うのだ、酷い話だその間も私は暑苦しい獣のような臭いをかぎながら無理にでも眠らなければならない。奴は私を使いたい時にたたき起こす。そして、行為に及ぶ。最低最悪の化け物だ。



「ハァ、ハァ」もうすぐで、ふもとの町が見える。此処は町から隔絶されていて、逃げ出すのは一苦労だ。後ろから手が伸びてきて、私の体を捕まえた。逞しい少しだけ日に焼けた腕。「探したぜ、なあ、あんた、俺の嗅覚舐めてんのか。逃げられるわけねぇだろ」「う、そ……此処までは順調だったのに」それでも、振りほどいて逃げたくて走ろうとすれば恐怖で足がもつれた。もがきすぎて体が前のめりに成る。がくがくと膝が笑い出して、止まらなくなった。鮮明だった世界は一転して白黒映画のように廻りだす。ああ、あ、嘘だ、嘘だ嘘だ。



この化け物を受け入れてしまえばいっそ、楽に成れるのかもしれない。逃げ回って小さな傷をつけた剥き出しに成っている手と足を固定されていて、うまく動くことが出来ない、私が小さい物でも抵抗を見せればニタニタ、面白い物でも見るかのように三日月に瞳が歪む。でも、その目は時たま私を見て、酷く寂しそうに色を揺らすのだ。「なあ、名前。躾が必要じゃねぇか?前々から気に入らねぇんだよ」「じゃあ、なんで連れてくるの?!私を返してよ!これなんていうか知っている?!拉致監禁っていうんだよ!」ちゃんとした立派な犯罪だ。私の人権とかそういうのがん無視なのだから。最低最低!って罵ればうるせぇ!って首元に噛みつかれた。奴は本物の狼なんじゃないかっていうくらい歯が尖っていて薄い皮膚を破った。熱い、痛い。泣きたい。「仕置きということはだ、お前の快楽とか気にする必要はねぇわけだ」「は?」いつもはこれでも少しは何とかしてくれようとしてくれる。なのに、今日は違うらしい、瞳に嗜虐を孕ませていて、私のきている服のボタンを弾いた。



「覚えてねぇのか」「……」「覚えてねぇのかよ、何も。泣きてえのはこっちの方だ」何も覚えていないよって痛みと微睡みの中で答えれば悲しそうに化け物が言うのだ。両の手のひらを顔に押し付けて言うのだ。「お前と俺は、昔に逢っているぜ、思い出せよ。俺の名前だって本当は知っているはずだろう?!」ガルシャア、その男は連れ去った初日に言った。だけど、聞き覚えが、な、……。遠い記憶に居る、人の形をしたそれでも何処か違う男の子が同じ名前を名乗っていたのを思い出した。指切りをしていた。「俺は人間じゃねェけどいいのか?」「うん、私――君が好きだから!大好きだから!」「じゃあ、迎えに行ってやる。お前がどんなに遠くに離れていても探し出してやる。俺の家でずっと暮らそうぜ!お前は俺の」お嫁さんだからな!小さな男の子が言う。私は、当時は本気で同意した。だけど、そんなのもう時効に決まっているじゃ、ないか……。



だけど、その男の子もガルシャアだ。「思い、出した、」ポロポロ涙を零して私は初めて別の意味で許しを乞うた。もう時効でしょう、ねえ、私たちはもうあの小さなころの子供じゃない。私は人間だけどガルシャアは違うでしょう。結ばれちゃいけないんだよ、異種族だからと言えばガルシャアが「……うるせぇ、うるせぇ!お前だけは、生かしてやってもいいと思ったのに俺を裏切りやがって!」と叫んだ。未だに体を共有しているガルシャアが動いた。グルル、ル。獣の呻く声がする。獣の、嘆く声が、する。とても、悲しげに聞こえる。



あとがき

私はヴァンプさんの居る方を買ったので実に捏造されたガルシャアさんだと思います。15推と言っていたのでややそれっぽいの入れてみましたけど、書く側としては何処からがボーダーか実はわからなかったりします。割と王道(?)っぽくしてみました。お気に召していただければ幸いです。



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