愛してると繰り返すだけなら誰にでもできるので、



名前はよく、俺にずるいって言う。

何がずるいのかって、俺が名前のアズルを見ることが出来るのが名前曰く、ずるいってことらしい。そんな事を言われても俺はサザナーラに生まれたからアズルが見えるのは当たり前だし、今更見ないようにしろなんて言われてもどうにも出来るわけじゃない。何より名前だって、いつもアズルを見せびらかすように光らせている。…いや、地球人だからしょうがないのかもしれないけど。

とにかく名前は今日も俺にずるい、って駄々をこねていた。別に名前が俺を好きなのも、俺が名前を好きなのもお互い知ってるはずなのに、なんで名前はそんなに俺のアズルを見たがるんだろう。「…グラーミばっかりずるい」「また出た」「絶対ずるいじゃない!私だって、グラーミが何考えてるのか覗けないと不公平だよ」私はいつも覗かれてるのに、って頬を膨らませる名前はいじけているらしい。――あ、無視するな、って言ってる。


「別に見れなくったっていいじゃん。俺は名前が好きで、名前だって俺が好きだろ」
「………」
「…そういう問題じゃないなら、どういう問題なんだ?」
「ばか!そういうとこだよ、ずるいの!」


そういう問題じゃないって、じゃあどういう問題なんだよ!後ろを向いていじけてしまった名前は、どうして分からないの、って心の声をアズルから発しているけど…流石に考えてもいないことを理解しろなんて、無理な話にも程がある。サザナーラ人だからといって人の感情を完全に理解出来るかと言われれば俺は出来ないし、何より名前は異星人なのだ。…分からない理由は異星人だから、で片付けられるものでもないみたいだけど。とにかく、名前はよくわからない。

そういえばアズルはいつも見えているのに、名前は出会ったときからよくわからないやつだった。名前は心の中で声を発さずにそのまま口に出していることが多いから、アズルが見えていなくてもそんなに俺は困らないと思う。…だから俺はどうしても分かってやれないんだよなあ。名前が俺のアズルも見れないと不公平だ、っていうやつ。名前に配慮して、出来る限り口に出すようにしているのに。好きとか。


「俺のアズル見たって、別に何も変わらないだろ」
「…そうかもしれないけど」
「見れないものは見れないんだし、諦めろって」
「………」
「俺のアズルがそんなに見たいの」
「見たいよ」


一切迷うことなく答えた名前は、俺に向き直って睨みつけてきた。「じゃあ聞くけど、グラーミは私のアズルが見えなくなったら不安にならない?」「……」なんだ、それ。アズルが見えなくなる…?思わず考え込んだ俺に、ほら不安になるでしょ、って少しだけ得意気な顔をする名前。そんな名前を見ながら、俺はアズルが見えなくなった時のことを想像する。――上手くいかないのは、息をするのと同じようにアズルを見ているからだろうか。

確かに不便になるかもしれない。意思の疎通が不便になるし、自分一人が見えなくなっても周りには俺のアズルが見えているわけだから……不公平だと思うかもしれない。
それでもやっぱり名前がぶつくさ不安になる、と言う心情まで理解することが出来ないのは、俺にアズルが見えなくなる、なんてことが(それこそ本当の異常な事態でもない限り)有り得ないからだ。うーん…名前の気持ちを理解してやるには、名前と同じようにアズルが見えないようにするしかないみたいだけど、それは出来ないから…


「お前と俺ってさあ、分かり合えないよなあ」
「何よいきなり。しょうがないよ、地球人とサザナーラ人だもん」
「でも俺は名前のこと分かりたいって思うから頑張ってるじゃん」
「……それが心からの言葉かどうか、私には確認出来ないの」
「女がめんどくさいのってさ、どこの星でも同じだったりする?」
「知らない」
「だよなあ」


はあ、と溜息を吐き出した名前を覗き込むと、もういいよ、って諦めたような目を向けられた。「名前?」「……好きだよ」「いや、知ってるけど…急になんだよ、珍しい」思わず目を瞬いたけど、目の前の名前はさっきと同じ膨れっ面のままそこに居た。瞬きをする前と同じように不機嫌そうだし、熱があるわけでもないみたいだ。

グラーミのばーか、と俺のいない方に向かって呟いた名前は表情を緩めて、再び顔を背けてしまった。俺も好きだよ、って返すのが正解だったのか?あああ分かんねえ!


「……名前ー」
「なに」
「…やっぱり、俺は名前のこと分かってやれないかも」
「……それで?」
「分かるように努力するからさあ、もうちょっと俺を信じてよ」


これで駄目だったらどうすっかなあ、なんて考えながら回り込んで名前の顔を覗き込むと少しだけ頬を赤らめた名前の表情を見ることが出来た。なんだ、普通に照れてるんじゃん。「…やっぱり、グラーミはばか」小さく呟いた名前は、微かに首を上下に揺らして俺の首に腕を伸ばす。――色の違う肌。質そのものが違う髪。

それでも名前が信じてるよ、って耳元で囁く限り、俺は名前のことを諦めないのだろう。


愛してると繰り返すだけなら誰にでもできるので、



:確かに恋だった


(2015/03/27)

企画より寿明様に捧げさせて頂きます、ご参加ありがとうございました!
グラーミ君から漂う偽物臭すごくて本当申し訳なさすぎです…理想しかない
でもグラーミ君のあの、孤独なヤツだな、って言った時の首かしげて楽しそうにしてるシーンが一番頭に残ってました。あの髪の色綺麗で好きです。かわいい!スカウトキャラは稲妻でもほんとに落ちちゃいけない沼ですね…サザナーラほんとみんなかわいい…

改めまして、いつも本当にありがとうございます!普段からうるさくてご迷惑ばかり掛けててすみません;;
企画の際にいつも参加して頂けて、いつも褒めて頂いて、本当にいつも嬉しくて嬉しくて…!自分からめったに声を掛けられないんですが、寿明様はサイトを始める前からほんとに好きで尊敬しているので…今こうして仲良くさせて頂いているのが時々夢みたいに思っています。ご参加本当にありがとうございました。これからも大好きです!

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グラーミ君書いてくださって本当に有難うございます。何処でも見られる物じゃないので今自分でも書いているのですが、星乃様の文を見て満足しちゃいそうです!;でも、サザナーラの子は皆可愛くて天使ですよね!いやぁ…、本当ですね…落ちちゃいけない沼ですよね…私も何度他校沼(ロデオ君とかも)に落ちたことか…。本当グラーミ君と夢主ちゃんがお互い思い合っていて、それでいて可愛くて悶えました。眼福でした!


こちらこそ、改めていつも有難うございます!いえいえ、とんでもないです!自分のサイトが星乃様のサイトが出来る前から〜っていうのはなんだか恥ずかしいというか照れちゃいますね;私はいつも星乃様の文章力の高さには驚かされっぱなしです!;私も大好きです!本当に書いてくださって有難うございました!

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