愛すべき確信犯



まず顔。そして髪の毛、爪の先から足。どこをとっても彼は美しい。でもそれだけなら彼でなくてもいるかもしれない。人なんてものは皮を1枚剥がせば皆同じ。だけど、彼はそれに当てはまらないような気がしてしまう。本当に当てはまってないのかもしれないし、当てはまって欲しくないだけなのかもしれない。そう思えるほどに彼は全てが美しかった。その上性格も良いものだから、彼は神様が作り出した最上級の"ひと"なのかもしれない。

「また、何を考えてるんだい?」
「…すごいなあって」

私を覗き込んで問う彼にざっくりとした答え。これだけでもう察しているのだろう。照美はとても鋭いから。

「名前は考えすぎさ、いつもじゃないか」

いつも、そういつもだ。照美が私の彼氏でいる限り私はずっと考えていくんだろう。とりあえずしばらくは別れるつもりはないけど、本当に隣りにいていいのか。良くて親戚とか友人、悪くてただの引き立て役。彼女になんて見えるわけが無い。とんでもなく美しい彼の彼女は普通なら、こんな平々凡々の私なんかじゃなくて花のように綺麗に笑う上品で可憐な、女の私から見ても惚れ惚れするような子を選ぶはずなのだ。

「照美は変わっているよね、」

まさに文武両道才色兼備な彼だから、見る目だけは無いということ?天は二物を与えずって言うけど、それだけじゃ割りに合ってない。とても万人受けしない性癖とか、とんでもないぐらいの不幸体質とかがあれば納得できるけど。いや、私が知らないだけで本当にあるのかもしれない。

「こら」
「え」
「名前の考えていることくらい分かるよ。」
「へ〜すごーい」
「…それ、褒めてないだろう」
「褒めてるし」
「どうだか」

やれやれと言ったように溜め息を1つついてから私の頭を撫でる。ちらりと見えた白くてすらりとした手首がやっぱり綺麗だった。

「私は、分からないよ」

真珠と石ころ、花とゴミ、月とすっぽんみたいな。でも私はそんなことを思っていても照美の側を離れたくない。もし照美が私以外の、私よりも何倍も綺麗で照美と並んでも違和感も何も無い人を選んだら、…そんなのいやだ。考えただけでもむかむかして頭が痛くなる。もう、どうすればいいんだろう。

「簡単なことさ」
「な、なに?」
「名前は、難しいことは考えず僕の隣りにいればいいだけだよ。」
「ううん、」
「不満かい?じゃあこうしよう、」

隣りにいた照美が私の前に来て、手を握られる。サッカーやってるのに私より真っ白くて綺麗な手。

「どうか僕の側にいてくれ。僕からのお願い、聞いてほしい」

眉を下げて、少し切なさそうに笑った。どんな表情してもそうだ、私は彼に反することなんて出来やしない。こんなこと言われるだなんて嬉しい限りなんだけど。

「照美って、ずるいよね…」
「僕は知ってるだけだよ。自分の身の振り方を、ね」

こういう確信犯な所だって、好きで好きでしょうがない。これで私はまた照美の隣りでぬくぬくと過ごすんだろうけど、しばらくしたらまた悩むのだ。今まで何度も繰り返してきたから知っている。それでも照美から離れられないことを、私以上に彼は知っているからやっぱりずるい。




20150205


あざとい照美ってきゃわいい。やきもきさせたつもりですが、ご指摘などあれば遠慮なくどうぞ!寿明さんフリリク企画参加ありがとうございました!


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照美様が可愛すぎて、辛かったです。フリリク企画に参加して本当によかったと思いました!我が家に飾らせていただきますね!

寿明

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