はろー、にゅーわーるど



(・押せ押せヴァンプに困り気味夢主)


日焼けしていない、真っ白い肌。綺麗で絡まらない枝毛のない髪の毛。線の細い、されども運動をするためか程よい筋肉のついた体。それだけ見れば、非の打ちどころのない完璧な人である。だけども、欠点は誰にでも存在するようにヴァンプにもあった。異常な程に名前に固執している点である。名前は因みにそんなヴァンプを嫌がっている(対応に困っているともいう)のだが、それが余計にヴァンプの心を燃え上がらせてしまっていることに気がついていない。「やあ、名前。今日も僕に会いに来てくれたのだろう?」「え……いや、違うから……本当に、やめてくれないかな」きっぱりと困り顔のまま言い捨ててやったのにも関わらずヴァンプはうっとりと瞳を細めて名前の髪の毛に、指を絡めた。名前は悲鳴を上げて、手を突っ張ってヴァンプを突き放したがヴァンプはそれに特に気に掛けることはなかった。



「それにその……、メルフェに用があっただけでヴァンプに会いに来たわけじゃないの」「メルフェ?またまたぁ……。僕に会いたいのに理由は必要ないんだよ?もっと、自分の気持ちに素直に成って、ね。僕たちが出会ったのも、こうして会うのもデスティニーさ」ふっと、髪の毛を靡かせてポーズをとってジリジリと近づいてきた。しかし、当の名前はいつもヴァンプに困らされているせいか、対策にと色々と手を施してきたようであった。首飾りを見せつける。「そ、それ以上近づかないでっ!悪霊退散!!」「悪霊?!」十字架を模したネックレスだった。月光に反射されてそれがきらりと反射した。ヴァンプがそれに目を細めたがすぐに嫌そうに瞳を瞑った。「ぎゃあ!目が焼けるっ!なんてものを持ってきているんだい?!ちょっと冗談にしてはたちが悪いよ!」悲鳴を上げて一瞬、のけぞったがすぐに首元に飾られていたそれを勢いよく握りしめて、ぶちっと千切って振りかぶって遠くに投げ捨てた。草の中に姿を消したそれを名前は何故か慌てて探し出そうとかいう素振りを見せなかった。少し残念そうだったが、まだ秘策があるのか不敵な笑みを浮かべている。



「ふぅ、これで僕と名前を遮るものはないね!……って、うっ……今日の名前くさ……っ。って、いや!違う!臭いってそういう意味じゃなくて……!ぼ、僕の嫌いな物の臭いがする!」それを聞いて、名前が顔を笑みの形に変えた。「ああ、きっとこれね。ヴァンプ対策に持ってきたの」ジャーン。と鞄からニンニクを取り出してヴァンプの顔へと寄せた。「うげえええっ!は、吐きそうだ……っ!た、頼むからそれを近づけないでくれ……!」ヴァンプが地面に伏せて、あわあわとそれから格好とか気にせずに逃げ出そうとするところへ追い打ちをかける。ニンニクを持って顔にピタリとつけた。ただでさえ真っ白い顔を更に真っ白にしたヴァンプがえずいた。「普段追い掛け回されている私の気持ちが少しでもわかったか!」「わかった!わかったから!頼むからそれを遠くへやってくれないかい?!ほ、本当に吐きそうなんだ……うぉぇっぷ」この場に吐瀉物をまき散らしてしまいそうだ、とまじな顔していうので流石の名前もそんなものかけられては堪らないと、ニンニクを遠くに投げ捨てた。



「ふっ……かかったね」そういって、地べたに這っていたヴァンプに馬乗りのようになっていた名前の体をホールドした。「君から、こうやってくるなんて随分と積極的だね」「んなっ!今までの効いていなかったてこと!?」まさかまさか、ヴァンプ対策にととってきたものが二つとも駄目だったなんて、とホールドされたまま遠くに投げ捨てた二つを探そうと目を凝らし始めた。流石にあてずっぽうに両方とも投げ捨ててしまったため名前の、肉眼と今の状況では見つけることができなかった。悔しそうに呻き声を漏らす。「……いや、効いてはいたけれども。それくらいじゃ、僕の気持ちは曲げられないよ。ふふふ」「恐ろしい!投げなきゃよかった!演技が真に迫りすぎていた!」真に迫っていたというか、本当にヴァンプは苦しんでいたわけなのだが。いうほどダメージは食らっていなかったらしい。



「……で、本当はどうなんだい?僕の仲間に成って、一緒に過ごすっていう話は」「い・や」きっぱりと言い捨ててやるとヴァンプはそうかい?と随分寂しそうに口を耳元に寄せた。「君なら、僕たちの仲間に成っても僕はいいと思うのにな。それから、僕は君と本当に居たいなぁと思うんだけど……」いつものふざけた感じが全くなくて、真剣さを帯びていた声色。「……あ、」「何が怖いんだい?僕の気持ち?それとも、仲間に成ることが?両方とも何も怖くなんかないのに。ただ、僕と君が仲間に成って、此処で暮らすようになって幸せに成るだけ」この広い城のような家も、庭も何もかもが君と僕の物に成る。「僕は君を愛しているのさ。デスティニーなんだよ。何もかも決まりきっていたこと」そして、君が僕らの仲間に成ることもね。そういって、名前の首筋に口をやって、ガブリと噛みついた。ジワリと広がる痛み、それから。「ようこそ、名前」


はろー、にゅーわーるど。


あとがき
あんまり困っている描写が無いのですが、ヴァンプもガンマも押せ押せ!のイメージしかないです。そして、高いテンションが似合うと思います。落ちはちょっぴり自分の好みで書いてみました。前回も、リクエストくださり本当に有難うございました。QB様のリクエスト通りに書けているのですが……。

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