レッツ、ストーキング!




(・西野空とのデートに安藤や隼総に尾行される)


安藤が、寄り道の帰り道に帽子をかぶっている見慣れた紫色のおかっぱを電柱の陰で発見し怪訝に思いながら忍び寄り、「おい、隼総何しているんだよ。こんなところでこそこそ……」と話しかけた。隼総と呼ばれた同い年程の少年がビクッと体を跳ねさせ、反射的に振り向くと鋭い黄金色の瞳とかちあった。
「ばっ!驚かすんじゃねぇよ!」
「……お前、不審者だったぞ。こんな電柱の陰からこそこそと……」
先ほどの、隼総の不審者っぷりを再現しようとするときつい瞳に睨みつけられ、安藤はこのままだとファルコか、殴られるかのどちらかだ。と悟り、瞬時にやめた。



隼総はさっさと、どっかへ行ってくれ。と言葉には出さないものの、雰囲気を醸し出していた。安藤はそれを知っていながらも無視を決め込んだ。隼総が何をしていたか、ということのほうが気になっていたからだ。
「……何、見ていたんだよ?まさかストーカー……。犯罪だぞ……?」
「うるせぇ。いいからあれ見ろ」
指は刺さないものの顎先で、前方の二つの影を示す。安藤が目を凝らして、よくよく見る。その人物の両方に見覚えがあった。「あ!」と大声を出すと「声がでかいっ!」と口を隼総の大きな掌によって、塞がれてしまった。安藤はすぐさま、手を振り払い小声でつぶやいた。
「……苗字と西野空じゃないか。……なんで、こんなところに」
「……しっ。デートらしいぞ。西野空の奴が浮かれていたから、何かと思えば……!よりによって、名前と付き合っていたとは……ゆるせねぇ。西野空だけ爆発しねぇかな」
「そんな器用に西野空だけ爆発なんかしないだろ」
華麗な突っ込みは見事にスルースキルを発動した。彼のスルースキルは高いようだ。



西野空はそんな二人には気が付いていないのか、でれでれしながら喫茶に入っていった。慌てて、後をばれないように少し時間をおいて来店する二人。明らかに不審者なのだが、店員は笑顔で迎えてくれる。そして、わざと西野空たちの会話が聞こえる、近い位置に座る。
「そういえば、お前帽子なんか被っているけど、変装のつもりか?」
「悪いかよ。そのままだとばれるだろうがよ」
「確かに……お前結構、特徴的だしな」
納得した様に、注文した紅茶を啜る。聞き耳を立てる隼総には半ばあきれながら。それでも、安藤も気になるのか一緒になって聞き耳を立てる。
「宵一君、今日は部活ないんだねー」
「うん、ないよぉ。名前とずっとこうやってゆっくりする機会なかったからぁ。僕楽しみだったんだぁ」
「……けっ、デレやがって」
「……西野空もあんな顔するんだなぁ……。意外だ。きもいな」
デレデレしている西野空に二人は辛辣な言葉をかけながらも、興味津々だ。



ジッと後ろから様子を伺っていたら西野空が二人の視線に気が付いたように、顔を向けた。やべっ!と言って二人は慌てて顔を背けた。それから、時間を少しだけおいて視線を戻すと西野空は苗字がいるにも関わらず携帯を弄っていた。
「……ばれたか……?俺ら?ていうか、名前がいるのに、携帯なんて弄りやがって。西野空の奴。最低だな」
「……だ、大丈夫じゃないか?すぐ、顔背けたし」
二人して寿命を縮ませながら、身を固くしていたら行き成り隼総の携帯がけたたましくなりだした。「やっべえ!」と悲鳴をあげながら、携帯を弄りサイレントにする。そして、メールを確認する。


メールの差出人を確認して隼総が青ざめた。メールの差出人は西野空だった。内容は「隼総何、僕たちの後つけてきているのぉ?邪魔しないでくれるぅ?」だった。
「……ばれた」
「あ?!ばれた?!」
安藤もその言葉に、驚愕しながら隼総の携帯を見て血の気が失せた。西野空たちの方に視線を戻すと、西野空たちが忽然と姿を消していた。残されていたのは、空っぽになったコップたちだけ。慌てて後を追うべく、会計を安藤に隼総は任せて店を出る。安藤も遅れて隼総の後につく。なんとか西野空たちを見失うことも無く発見することに成功した。



「……今度は、アクセサリー見てやがる」
「お、西野空の奴苗字に何か買ってやるみたいだぞ。なかなかやるじゃないか」
安藤が感心気味に、電柱の陰から覗き込みながら言う。隼総も「おー」と感心の声をあげながら、やるじゃねぇか。と呟いている。
「ねぇ、これとかどぉ?名前に似合うと思うよぉ?僕が買ってあげる〜」
「……わっ、可愛い〜。でも、いいの?」
「当然だよぉ。こういうのは男が出すものだからねぇ」
何かを買ってきたのか二人して手をつなぎながら出てきた。流石に遠すぎて、どんなものを買ったのかは二人にはわからないが。



「名前に手を出そうとしたら、俺どうしたらいいんだ……。不健全だ」
「……幸せならそっとしておいてやれよ……。見苦しいぞ」
安藤は、隼総の肩を叩いて慰めるように言う。西野空たちは相変わらず手を固く恋人つなぎをしながら歩いている。幸せそうだ。
「……あと、お前の変装……全然意味ないぞ」
「……マジ?今度はサングラスかけるか?ていうか、安藤も変装してこい。お前のせいでばれたのかもしれねぇし」
「俺のせい?!ていうか、また尾行するのかよ……。もうやめようぜ。見ていてむかむかしてくる」


どうやら、安藤はともかく隼総はこれからも度々、尾行するみたいだ。幸せな二人はそれを知る由もなく賑やかな人ごみの中を歩いていた。




あとがき

書いていて楽しかったです。正直、普通に書いてしまうともっと長くなってしまいそうな感じでした。本当はもっと夢主たちにもしゃべらせたかったのですが、隼総君たちにスポットライトが当たってしまったがために少ししか喋れませんでした。因みに隼総君は純粋に興味目的で尾行させるか(最初はこっちだった)、フラグ的な意味で尾行させるか迷いましたがフラグにしておきました。お気に召さなかったらすみません。櫻華様、有難うございました!


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