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坂田さん家

(▼固定主)

最近私物が消えるし、一人で帰っていると背後に人の気配がする。ポストには変な手紙が届いてるし……。
友人になんとなく溢した悩みは警察に相談しても対処してくれない困りごと。私物がなくなる程度の被害じゃ動いてくれなくて、でもそれ以上なにかあると怖い。最後まで話を聞いてくれた友人は、妹の友達のお兄さんが万事屋やってるらしいよと話を持ってきた。日に日に増える手紙に、既に限界を越えていた私は藁にもすがる思いで万事屋の人に会えるようお願いする。銀魂高校に通っているらしい妹さんに話を通してもらい、その友達に連絡をとってもらった。じゃあ早速明日にでもと返事を貰って、友人と共に銀魂高校へ向かう。

「あんたが樋口さん?」

声を掛けてきたのは自然で綺麗な銀髪に紅い目をした女の子。アルビノなのかな?と思いながら返事を返す。

「めっちゃ美人じゃん」

「もー、銀子はすぐそうやって人の顔じろじろみる!」

銀子と呼ばれた銀髪の子と友人の妹さんが話始めた。きゃっきゃしたテンションは昔を思い出すが、今の私にはそのテンションは少し厳しい。友人も妹さんの様子にため息を吐いた。

「あの、」

「あ、ごめん。私が万事屋の兄がいる坂田銀子。早速いこっか」

挨拶もそこそこに、友人とあっさり別れて歩き出す。友人達に手を振って銀子ちゃんの後ろを追いかけた。隣を歩けば、銀子ちゃんは歩きながらじっとこちらの顔を見詰めてくる。危ないよと声をかけると、クスリと笑った。

「やっぱあんた可愛いな」

兄貴に会わせんのやだなぁと呟く銀子ちゃんの目は本気で、頭に?を浮かべる。

「兄貴が樋口さんに惚れたら困るじゃん?」

「ないと思うけど……」

突拍子のないことを言い出す銀子ちゃんに思わず突っ込めば、銀子ちゃんは呆れた顔をした。

「あんた結構自己評価低いタイプだろ」

「そんな事……あるかも」

思い当たる節がないわけでもなく頷けばやっぱりと頷く。そうこうしている間に万事屋に着いたらしく、銀子ちゃんは歩みを止めた。

「ここだよ」

目線の先を見上げれば、"万事屋銀ちゃん"の看板がかかった2階建ての建物が目に入る。下はスナックお登勢の看板がかかっているのでまた別なのだろう。

「あ、下は大家さんな」

まるで心を読んだかのような銀子ちゃんの言葉に驚きつつも、なるほどと頷いて2階へ上がった。

「兄貴ー、帰ったぜー」

「お、お邪魔します?」

事務所兼家なのかな?と思いつつも一緒にあがる。中は思っていたよりも生活感があり、やっぱり兼用なのだなとぼんやり思った。通された居間には社長用デスクのような物と大きなテーブル、向い合わせのソファが二つ。ちょっと事務所っぽい。デスクに座っていた、銀子ちゃんより癖の強い髪型の男の人はこちらをみて柔らかく笑う。

「いらっしゃい、ソファどうぞ」

お言葉に甘えて腰を下ろす。男性は向かいのソファに腰掛けた。

「どーも、俺が万事屋やってる坂田銀時だ。ストーカーにあってるんだって?」

銀子ちゃんがテーブルに私と銀時さんのお茶を置く。有難うと会釈して、そうなんですと銀時さんを見た。銀子ちゃんは何かあれば呼べよと部屋に戻ってしまう。

「2週間くらい前から続いてて……。1週間前からは手紙がきてて、ハンカチとかペンとかいつの間にかなくなってるし、帰り道は視線を感じるしで怖くて」

「なるほどな」

銀時さんは少し考える素振りを見せると、ちなみにと言葉を続けた。

「物がなくなったのがいつかはわかるか?会社の中とか」

「えっと、外食をしてるとき……ですかね?」

会社の中はなかったです。なるほどと銀時さんは思考の海に沈む。1、2分そうしていると、銀時さんは顔を上げた。

「とりあえず、ストーカーは社内の人ではないんだと思う。近所のやつとか、たまたますれ違ったとか赤の他人じゃねえかな。樋口さんが出来る対策としては、部屋に隠しカメラ設置とかボイスレコーダー持ち歩くとか位だと思う」

「そう、ですか……」

やっぱりそれくらいしか出来ることはないのかと不安になっていると、銀時さんはもう一つ、とこちらを見る。

「これはあんたが嫌じゃなければだが、ストーカーが捕まるまで俺が護衛みたいなのしようか?」

えっ、と思わず固まった。万事屋と言ってもあくまで他人の一般人にそんな事を頼んでもいいのだろうか。私一人よりはずっといいのだが。おろおろする私に銀時さんは安心させるように笑う。

「これでも剣道有段者だし柔道黒帯だぞ。一般人よりかはつえーよ?」

「あ、えっと……お願い、します」

その笑顔になんだか安心してしまって、私は頷いた。銀時さんは立ち上がり、私の頭を一撫ですると、デスクから2枚の紙を取り出してくる。ソファに戻ると、白色の1枚にさらさらとペンを走らせた。

「とりあえず、予定としてはこんな感じで。あ、樋口さん彼氏とかいる?」

「いないです」

「じゃあ、設定として彼氏とかそんなんでいいんじゃねえかな。変に護衛っていうよりいいだろ」

嫌なら別の考えるけどという銀時さんに首を振る。寧ろそれで諦めてくれるかもしれないし有り難い。

「じゃあそれで。出勤退勤の送り迎えとどっか出かける時とかも呼んでくれれば行くから。後は……」

話と同時進行でもう1枚の紙に内容をまとめていく。しっかり中身を取りまとめて、お互いに同意のもと契約書が作られた。

「じゃあ、こんな感じで。これ、俺の番号な」

メモ用紙に書かれた11桁の番号を受け取り携帯に登録する。坂田銀時の文字と増えた番号。なんだかとても心強かった。






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シリーズからのエクスポート
坂田さんがいっぱいな現パロ。
時系列は気にしない方向で。

基本的に書きたいところだけ書くので増える保証はない。
以下絶対書くとは限らないのでみといた方がわかりやすいかもしれない設定。

▽樋口神流
20代。
ストーカー被害に遭い困っていたところ、友人の妹のお友達である銀子ちゃん経由で万事屋を紹介される。

▽坂田家
銀さん派生キャラで家族なとんでも設定なお家。

▽銀時さん
坂田家長男。
万事屋を営む27歳。原作銀さん。

▽銀八さん
坂田家次男。
銀魂高校の国語教師を務める26歳。3Z銀さん。

▽金時さん
坂田家三男。
高天原勤務の21歳。ホストパロ金魂金さん。

▽銀子さん
坂田家長女。
銀魂高校に通う16歳。性転換銀さん。


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