Short | ナノ

シュガーレイン

(原作117話/付き合ってない/▼固定主)


出久君に今日までに返さなきゃいけないものがあったと探して早一時間。仮免試験後だというのに元気に喧嘩している出久君と爆豪君を寒空の下座って待っていた。後で怒られるんだろうなぁなんて他人事で考えているとエントランスのドアが開き、不機嫌そうな相澤先生が顔を出す。叱りに来たのだろう相澤先生を止めたのはオールマイトで、何やら二人で話した後、オールマイトだけがグラウンド・βに向かっていった。やることのなくなった相澤先生は辺りを見回し私を見つけると歩いてくる。

「……樋口」

「あ、相澤先生」

今気がついたふりをして先生を見ればいつにも増して気だるげな顔。しかも髪を結っていて、これまた格好良いななんて思いながら隣に座るように促した。

「お前まで何してるんだ」

その声はお前も叱らなきゃいけないのか?と言う疑問がありありと見えていて苦笑する。

「いず……緑谷君に用事があって待ってるんですよ」

もう一時間くらいですといえば「止めろよ」と小突かれた。どうせ聞く耳を持たないし、今日もいっぱい怪我したのに無理やり割って入ってさらに怪我を増やしたくない。そんなことを呟けば、先生からは大きなため息を頂戴した。

「寒くないか?」

外で待つなんて考えてなかったから、私の格好は半袖短パンで見るからに寒い。秋の夜はやはり冷えるため、素直に頷いた。先生はどこからか取り出した捕縛武器を膝にかけてくれる。見た目に反して重いそれはすでに熱を持っていて、冷えた体にじんわりと熱を伝えてくれた。

「ま、ないよりはマシだろ」

「ふふ、ありがとうございます」

そっと先生に寄りかかれば身体を預けやすい位置に動いてくれる。それが嬉しくて擦り寄ると呆れたように笑って頭を撫でられた。先生の笑顔が愛しいものを見るそれで、急に恥ずかしくなって体勢はそのままに話題を作る。

「今日は髪結んでるんですね」

「仕事の途中だったからな」

「仕事中は髪結ぶんだぁ」

初めて知ったことに嬉しくなり結ばれた髪を見つめた。じっと見ているといつもより見える顔がほのかに赤くなっていて、にやける顔が抑えられない。今度は先生が照れてるなんて思いながら眺めていると、照れ隠しか、額をペチリと叩かれ睨まれた。それすらも愛しい気持ちになってへらっと笑う。

「また髪結んでるの見たいです」

「……今度な」

顔は赤いまま、苦虫を噛み潰した表情で呟いた。うんと頷いたところで、先生の携帯が着信を知らせる。どうやら喧嘩は終わったようで、こっちへ戻ってくるとのことだった。途端に険しい顔に戻って捕縛武器を手にとると、私を立ち上がらせて扉をくぐる。救急箱を取り出して椅子に腰をかけた。深いため息を吐いて頬杖をつく姿はすでに苛立ちをにじませている。
暫くするとオールマイトと出久君、爆轟君が入ってきた。私がいることに驚いた顔をしたが、何か口を開く前に先生の怒鳴り声が響く。説教しながら手当をするなんて器用なことをこなしている先生を見ながら、巻き込まれないように数歩下がって床に腰掛けた。本格的にやることがなくなって、出久君のノートをパラパラとめくる。すると手当が終わったのか、先ほど膝に掛けられていた捕縛武器で二人が巻かれていた。オールマイトの一声で、今日何度目かのため息を吐いた先生が二人を離す。謹慎を言いつけられてようやく解散の形になり、出久君にノートを返した。

「樋口さん待たせちゃってごめんね」

困ったように笑う出久君にひらひらと手を振る。

「いいよー、結構有意義な時間だったし」

「何かあったの?」

「んふふー、秘密」

出久君の質問に、唇に指を当てた。相澤先生とイチャイチャしてましたなんて死んでも口から出せないから煙に巻く。ぽんと顔を赤くした出久君は女の子に耐性がなさすぎじゃないだろうかと思いながら、早く戻らないとまた怒られちゃうよと笑った。

「そ、そうだね!」

パタパタとかけていく出久君を見送り、私も自室に戻ろうとすれば先生に引き止められる。

「樋口、これやる。暖かくして寝ろよ」

先生は暖かいコーンスープ缶を手に握らせるとそのまま部屋に戻っていった。お礼を言い損ねたなと思ったところで、逆に明日話す口実ができたと口角を上げる。明日の時間割を思い出しながら、いつ先生のところに行こうか考える。ああ、明日が楽しみだ。




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元原作時間軸シリーズのやつ。
先生×生徒で相澤さん。
だいたい付き合ってるようで付き合ってない。

固定主ちゃん(1-A)
個性:ビデオ(早送り/巻き戻し/一時停止)
すべての形ある物体の時間を早送り、巻き戻し、それを一時的に止める個性。右手で触ると早送りが始まり、離すとその状態で止まる。左手で触ると巻き戻しが起きる。早送りができるのは+50年の状態まで。巻き戻しは1歳児まで。両手で触ると元の状態に戻せる。個性を使われた状態で負った怪我などは元の状態に戻っても反映され、元の状態の時に負った怪我などを直すことはできない。ただし、肉体状態はその年齢にあった状態となる。精神状態は実年齢同様。
バリバリの理系で英語と社会は苦手。向上心はあるので先生に質問するなどして半分以上の成績は納めている。常に明るく元気に振舞っている。頭の回転はまあまあ早く、個性が攻撃系ではないので一応身体も鍛えている。

小6の時ヒーローに助けて貰ってから明確にヒーローを目指すようになった。その時助けてくれたヒーローが誰なのかを調べるとイレイザーヘッドで、その時はただの憧れだったのが雄英に入学し、身近で接するようになってから恋になる。相澤から言われたことは無理難題でも簡単に受け入れる。周りに引かれると「何事もPlusUltraだよ」と首をかしげるタイプ。



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