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飴玉

夏場の掃除は重労働だ。それもようやく終わり、疲れたとともに息を吐き出す。
疲労を感じると何か甘いものが食べたくなるのは人の性というものでポシェットに入っていた1つの飴を口に放り込んだ。

「よ、お疲れ」

声に目を向けると、マルコが滑る汗を拭いながらこちらを見つめていた。なんだかその仕草が艶かしいななんてどうでもいいことを考えながらひらりと手を振る。

「やっぱり掃除は疲れるねぃ」

隊長でも掃除は重労働なんだなぁと思ったところで、彼の部屋は常に綺麗に保たれていることを思い出した。何がそんなに大変なのだろうか。

「そりゃお前、他の野郎どもの手伝いに狩り出せれたんだよい」

なるほどそれは想像に難くない。自分の部屋だけでも大変なのに。これからは常に綺麗にしておこうと心に留めて、飴玉を転がす。

「ん?お前さん何食べてるんだよい?」

「飴玉ですよ」

隊長も要りますか?なんて声をかけて、飴がもともと1個しかなかったことを思い出す。

「あ、ごめんなさい。もうなかったです」

自分から言ったのに申し訳なくなって頭をさげるとマルコはにっこりと笑った。

「気にすんなよい」

その言葉と共に距離がぐっと近くなり、後ろに引いた腰を掴まれ、引き寄せられる。
ぬるりと口内に忍び込んできた何かは、口の中を弄ると甘さを主張する飴を拾い離れていった。はっと息を吐き出すと楽しそうに笑うマルコと瞳がかち合う。
悪戯っぽく舌を出すマルコの舌には先ほどまで口の中にあった飴が乗せられていた。

「ごちそうさま」

何をされたか理解した時にはマルコはすでに船員に囲まれていて。こちらにもう一度視線を送りつけると仕事に戻っていった。



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