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強奪

なんで、と思った。
なぜ、私が恋したのはこの人なのだろう。
彼は絶対に私を見てはくれないのに。



私が好きになった彼は、幼馴染のジェームズ・ポッター。
小さい頃から大好きだった彼は、ホグワーツで出会ったリリーという可愛らしい彼女にお熱である。
あ、これはもう私の気持ちは届かないなと、早い段階で理解した。
それでもこの気持ちは褪せることを知らなくて、自分自身を苦しめた。

「なんで止められないんだろう」

「難しいよなぁ」

そう言って私の不毛な悩みをずっと聴き続けてくれるのは、ジェームズの親友であるシリウス・ブラックだ。
対して進歩のない私の話をゆっくり、聞き漏らさずに聞いてくれるシリウスはとても優しい人だと思う。
いつの間にか、このお悩み相談という名の雑談の時間は私にとって心地の良いものとなっていた。
別に毎回悩み相談だけというわけではないし、勉強したり、他愛のないことを話したりが案外楽しくて、ジェームズのことばかり考えている時間が少し減った気がする。
そのことをぼんやり漏らすと、シリウスはガタリと机を揺らした。

「どうかしたの?」

いつも余裕のある顔をしたシリウスがこんなに目を白黒させているのが珍しくて、思わず首をかしげる。
しかしいつまでも返事はなくて、顔を伺おうと覗き込むとガシリと肩を掴まれた。

「なあ、それ、」

何か言いづらそうに言葉を探すシリウスに、なあにと問えば、意を決したのか口を開いた。

「俺のこと好きなんじゃねぇの」

口を出た「えっ」という驚きの声は、目の前の男に飲み込まれる。
極め付けにちゅっというリップノイズが聞こえて、現実味もなくキスされたのかと頭の隅で考えた。

「やっと神流のこと奪えた」

ニヒルに笑うシリウスに拒絶の言葉なんか出るわけもなく、ただただ驚きが頭を支配した。


君に心奪われたのはいつからだったか



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