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恋は秘め事

シリウス・ブラックはその見た目、家柄からたいそうモテる。
しかし、彼の友人は今までシリウスには彼女の影が一切見えたことはなかった。

「君ってどうみても女好きそうなのに、不思議だよねぇ」

シリウスの親友、ジェームズ・ポッターは心底不思議だという顔をして呟く。
それに嫌そうな顔をしたシリウスだったが、彼の友人であるリーマスとピーターもジェームズに賛同し確かにと頷いた。

「誰が女好きだ」

少しばかりイラついたように文句をあげると、だってとジェームズは不満を口にする。

「君はどんな女の子の言葉にも笑顔で対応するじゃないか!そのくせ彼女の影は一切見せない、こんなの絶対おかしいよ!」

どこかで聞いたことのあるようなセリフだが、そのセリフを知るものはここにはいない。
しかし、その言葉はとても大げさに聞こえて、シリウスはより顔をしかめた。

「あれは体裁保ってんだよ、ばーか」

シリウスが体裁を保つなんて!とまたも大げさにジェームズは顔を覆う。
はいはい、と既に面倒になっていたシリウスはひらひらと手を振って席を立った。

「どこか行くのかい?」

リーマスは何も言わず歩き出したシリウスに問いかける。
図書館、と簡潔な返事をしたシリウスを、リーマスはそれ以上追求しなかった。



所変わって図書館であるが、今日の利用者は数少なく、静かで落ち着いた雰囲気が漂っている。
シリウスはキョロキョロと辺りを見回し、何かを見つけるとそこまでのんびり歩き出した。

「よう、カンナ」

目的の場所はどうやらカンナと呼ばれた少女で、一人で本を読んでいた彼女はゆっくりと首を上げた。

「あら、シリウスじゃない」

カンナは隣の席に置いていた荷物を片付けると、隣の椅子をぽんぽんと叩く。

「隣どうぞ」

「サンキュ」

シリウスはそれを当たり前のように彼女の隣に腰掛ける。
カンナは読んでいた本を片付けた荷物と一緒に置くと、じっと見てくるシリウスに「なあに」と問いかけた。

「さっきジェームズがよ…」

シリウスは先ほどのジェームズたちとの会話を掻い摘んで話す。
するとカンナはクスクスと声を出し小さく笑った。

「あー面白かった。私たちは付き合ってるのにね」

そう言って内緒話のように小声で喋るカンナにシリウスもまた、だなと小声で返す。
クスクスと小声で笑いあう二人は確かに甘い恋人同士で、なぜ周りがそれを知らないのかが不思議なほどである。

「でも、やっぱりみんなに内緒にして正解だね」

笑いが治ると、カンナはいたずらっ子のような笑顔でシリウスを見つめた。

「こうやって誰にも邪魔されないで過ごせるんだもん」

「そうだな」

そんなカンナを愛おしそうに見つめるシリウスを知るものはここにはいない。
この大事な時間を壊さないように、シリウスはそっとカンナに口付けた。



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