1.私
『ん…はぁ、気持ちいい…』


ふにっ、とした唇。触れただけで、凄く気持ちいい。

こんなに気持ちいいキス、初めてした…


『もっと、もっとして…』


あまりにも気持ち良くて、何度も催促した。
この度に、触れるだけのキスをくれる。

何度目かのキスの後、そっと目を開けて、キスの相手の顔を見る。


わぁ、凄く綺麗な顔…男性、だよね?

その綺麗な顔に触れると、


?『…お前は、誰だ?』


低い声。やっぱり男性だ。


『私は…』


名前を言おうとした時、遠くで私を呼ぶ声が聞こえた。

呼ばれた方に顔を向けると、眩しい光が。
反射的に目を閉じて、開けて見えたのは、明るい映画館のスクリーンと、友人の顔だった…


奈央『もぅ!何度呼んでも起きないんだからっ!次の上映が始まる前に早く出るよ!』


プンプン怒ってる友人に腕を掴まれ、引き摺られるようにして映画館を後にした。

いつまでも私がボーっとしたままなので、友人は心配して近くの喫茶店に入った。


奈央『ねぇ、どうしたの?具合悪いの?』

『ううん、具合は悪くない。ただ、夢を見ただけ…』


そう、夢を見ただけ…
とてもリアルで、凄く気持ちのいい夢をね。

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