青空の下で | ナノ

(結婚・・・か・・)

ロクはだいぶ前に布団に入ったものの、まだ寝付けずにいた。
ごろん、と何度となく寝転がりながら考える。
あまり考えたことはなかった、でも自覚せざるを得ない。
自分は忍であり、女であり、長年続く一族の跡継ぎの可能性もある位置なのだと。



『奈良の女はね、愛した人の血を、愛した人の子を産み落とす時、その子供が色濃く受け継ぐような身体に出来ているの。
産まれた時からね。血を濃く残す為に一族同士での婚約も珍しくない。
でも・・・そんなのは貴方にはしてほしくないの。自分の意思で選んだ人と、そしてその面影を濃く持つ子供と・・・
そんな人達と過ごせる日があるのなら、家系の悩みなんて小さなものに感じるわ。現に私がそうだったし。
あの人にはいつも支えられた、あの人も支えてほしいと言ってくれた・・・だから、後悔なんて全然無いのよ』



幸せになってほしいの。
・・・ヨシノさんの心からの言葉に、私は目が潤んでいるのをあの時感じていた。
どこまでも娘のことを考えてくれる、そんなヨシノさんが誇らしくて。
別に、私はどこの誰と結婚しようが、大丈夫だとは思った。
この家に生まれたことが今一番の何よりの幸せなのだから、そうすることが恩返しになるのなら知らない人とも私は平気で付き合えるんじゃないか。
まるで他人事だ・・・。
でも今日話を聞いてみて、思うことはまた増えた。

(好きな人、か・・・)

義務感で結婚するな、とヨシノさんは暗にそう言っていた。
心から、愛する人と共になれ、と。
だから私のこの考えはふさわしくない。
前世のような生き方は真っ平御免だと時が経つごとに私は思っていた。
新しい生き方を今提示してくれたヨシノさんには、何を言っていいのだろう、感謝の言葉が見つからない。

ああ、私らしく生きるって、なんなのだろう・・・

うつらうつら。
ようやく襲ってきた眠気。
今難しいことを考えるのは、とりあえずやめよう、
時がなんとかしてくれるというのは甘ったれた考えだろうけど・・・今の私には恋愛なんて理解できないと思うから。





『・・・男が女物を着せられてた、って・・・ことはさ・・』
『そうよ、あの人もずっと小さい頃は着せられたって文句ばっか言うの!
任務の伝達に鳥使わないで直接赴いた時偶然見ちゃってねー、あれはいい笑いの種になったわ』





ふとそんなことを思い出してしまい、
思い出し笑いをしながらロクは眠りについた・・・・。













この先に待ってる、愛しい人?
もしもいるなら、夢でもいいから会いに来て
ロマンチックなんて似合わない柄だけど、
ヨシノさんと同じ道を、私も歩んでみたいと思うから・・・


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