「先程の急停車は誤報によるものと確認できました。
間もなく発射します、大変ご迷惑をおかけしました」

再び出発を告げる列車の音。
顔が青くなるあいつ、
にっと僕は笑いを浮かべた。

「逃げよ!!」
「ただで逃がすと思うなよクソガキが!!」

今度は、からかう為のものじゃない。
本気で傷つける魔法。
伸びた影を鋭く細く構成しながら、そいつの胸めがけて攻撃する。
ザシュッ

「ぐ・・!」
(外れた・・浅い)

反応してくれやがったせいか、目標だった心臓ではなく肩にかする程度。
けど・・・かするだけでも結構きくんだよねえこれ。
ツー、と肩から腕にかけて血が垂れてくる姿を見て笑った。

「アイゼンヴァルトに手ぇ出したんだ、次はこの程度ですむとは思うなよハエ」
「・・!てめぇの面覚えたぞ!!今度は外で勝負・・」

大きく列車が動く。
・・アイゼンヴァルトっていうか、僕に手出したからね。気に食わない理由はそれの方が大きいよ。
ゴッ、とまた拳に変化させた影が主人公を割れた硝子ごと列車の外へと弾き飛ばす。

「ヒャハハ、逃げたかったんでしょ、感謝してくれよ!」

まあ、そろそろエリゴールのいる駅に着いちゃうし。
一緒にいない方がお互いの為でもあるって言うか。
・・・ちっ、と舌打ちをした。

(いいや、どっちみち教える気は無いし)

このままアイゼンヴァルトとハエがやりあってくれれば騒動に紛れて一人逃げることは可能だけど・・。
うちのボス、弱いもんな原作参照。
だからといって僕も弱い立場ではいたくないから頑張ってきた。
自分で言うのも何だけど、能ある鷹は爪隠すものだ。
だから、まだ安全なルートを辿るのが今は正解だろう・・・それにしても、やっぱり主人公むかつくからここで本気出しておけばよかったかなあ。

(・・・・ま、都合のいい時に使い道あるだろう)

ああいう手合いは確かに大嫌いだけど、
馬鹿で単細胞な奴は同時に使い勝手がいいしね。





少しずつ捻じ曲げようか
(さて、いい展開に動いてくれよ・・勿論僕にとっての、ね)




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