「・・・まーた無茶しおったのう姉ちゃん」
傀儡に関しては、嫌な事件がこの里にはある。
その出来事が起きてから、傀儡を操る者に対して疎遠になる動きがちらほらと今も見られている。
傀儡使いが少なくなったのは、優秀な人材がなくなりつつあることも理由の一つだが、
あの出来事があってから、傀儡使いに対する視線が変わったこと。
そして・・その出来事に一番近いのは、自分の姉なのだとエビゾウはわかっていた。
「どうせ、ねじまげたんじゃろ?相談役の権力ふりかざしすぎじゃないんか」
「なーに・・また昔の実戦を取り入れたまでよ。いつまでもあのことにしがみついておれんよ、それに・・」
もう、孫みたいな存在が他にも出来たしな。
悲しい顔はしてられん、と笑顔で返すチヨ婆。
「・・・それを姉ちゃんが言うかねえ・・」
一番悲しいのは姉自身のくせに。
絶対忘れようも出来ない、あのことをやわらげてくれる程、
カルマの存在はチヨ婆の中で大きくなっているのだろう。
姉は少しでも、救われているのだろうか?
大事な孫が消えてしまったあの日から、少しでも前に進めたのだろうか・・・。
(戻れるもんなら戻りたいじゃろうな)
それは、もう無理なことだろうけど。
エビゾウは何も言わなかったふりをした。
外は、新月の夜だった・・・。