"私"だった記憶を持つ"俺"
前世の記憶を持っている以外には、生まれ変わっても平々凡々な暮らしを出来る少年だ。
・・その立ち位置が、キャラクターでなければの話。

「シカマルー、話聞いてんの!?」
「あーはいはい聞いてる聞いてるめんどくせーなぁ聞いてるよ」
「うそおっしゃい!!」

そう。
俺は、NARUTOの世界・・・しかも、シカマルという人物そのものに成り代わってしまったようでもう十数年。
二度目の人生は、二次元の中でした・・なんて、誰かに言える筈もなく。
精一杯彼らしく生きてきて、気がつけば本人と変わらないくらいに面倒くさがりになってました。
真面目に不真面目、というやつです。
生まれ変わって性別も変わってしまったけれど、男としてのなんやかやは男の身体に生まれたからかそれ程違和感はなく。
ただ一つ原作と違うのは、

「そう怒るなよ、かわいい顔が台無しだぜ?」
「な・・・か、からかわないでよっ!」

ぷい、と顔を背けてしまう幼馴染。
くっくっと笑えばその声が聞こえてしまったのかすぐに殴られた。

「ってーな!何すんだ!」
「シカマルのくせにー!あたしを口説くなんて百年早いわよ!」
「ラブラブだってばねー」
「大丈夫だ俺はナルトも愛してるぞ」
「ひいい・・・!気持ち悪いってばよー!」

照れなくてもいいのに、
カカシ先生の背中に急いで隠れるナルトを見て苦笑した。
三班合同任務終了の帰り道、何でか知らないけど呆れたような視線が俺に向かう。

「あんたねー!いい加減その変な接し方やめなさいよ!何回も言ってるでしょーが!誰のせいで変態10班とか言われてると思ってるわけ!?」
「失敬な!人間愛だ!」

・・・まあ、原作と違うところはこれこの通り。
前世からの精神年齢もあいまってか、どうも同期である皆を過保護に扱ってしまうのだ。
だって、皆かわいいし・・・!
ショタだ?ロリだ?勝手に言うがいい、私は・・・じゃない、俺はこの子達を全力で守り通すと決めたのだから!

「人は、人を拒まない。拒むとすればそれは心の狭い人間だ。
恋愛事にだってそれは通じるぞ、男と女だからじゃなくて、好きになった奴が男だった。好きになった奴が女だった、ただそれだけだろ?
全ては人間愛に通ず。結果、俺が皆に対して"愛してる"と言っても、気持ち悪がられる道理は一切無いはずだ!!」
「お前、本当頭の無駄遣いだと思うぞ」
「さんきゅーアスマ」
「褒めてるわけじゃねえよ!!」

力説!
だってこれが俺だもの、といえばがくっとうなだれる担当の先生。

「まあがんばれアスマちゃん。変態班まっしぐらだねすごいね」
「て・め・え・・!!てめぇにだけは言われたくねえぞカカシィ・・・!」

まあそらそうだわな。
本当にカカシ先生ってば原作と同じで子供がいるところでも平気でイチャパラ見ながら歩いてるんだもん。
そりゃ説得力に欠けるわ。

「やっぱ三班合同任務は最高だよなあ。任務自体はくそめんどくせーけど」
(((忍にあるまじきこと言ったよこいつ!!!)))

「ナルトの元気な姿見れるし、サスケの無愛想ぶりも相変わらずだけど可愛いし、
サクラもツンデレ具合が最高だし。ヒナタは本当ほんわかして可愛いし、
キバも年相応、マジでかわいい。シノは子供にはない思慮深さだけどそのギャップがいいよな、
言わずもがなチョウジはぽっちゃりしててマジ癒し系だしかわいいし、いのの美貌も言うことなし!

・・・さあ、次はお前らの告白タイムだぞ!」
「「「「「誰が言うかあああああ!!!」」」」」

皆つれない。



「あーあー・・・マジで、俺んとこの子に手出したらそん時はアスマお前を殺っちゃうよ?マジで殺っちゃうよ?」
「私のところもよ・・!あんた、10班にどんな教育してんの・・!」
「担当上忍の趣味もあいまってああなってるんじゃないのアスマ」
「好き勝手言うなああああ!あいつはアカデミーの時からあんなんだったんだぞ!俺は関与してない!」



担当上忍は皆頭を垂れながら悩んでいた。
奈良家の長男は、どこかどころかかなり異色の存在で。
IQ200以上あるんだぜ、と彼の父親から聞かされた通り、任務での作戦はこちらが任す程までに、その頭脳は信頼がおける。
が、しかし、異色なのは子供につりあわない頭のよさではなく彼の変わった性格もその一つだった。

「皆鳥肌たてて逃げてるようにしか見えないんだけど」
「断じて見えんな。ヒナタとか顔赤らめて照れてるじゃねえかシノもチョウジもいつも通りじゃねえかあいつは悪いこと言ってない言ってない俺の教育は悪くない悪くない」
「ごまかすんじゃないわよ・・・」
「うるせえ、俺が否定したらそれこそ変態10班が確定するじゃねぇか!」

ただでさえ変な噂が流れてるのに、とアスマはくらくらした。
いのいちさんが見てるところでいのにかわいいとか好きだとか言った時は流石に死期を悟ったくらいだ、
それ以来色々な意味でシカマルの行動には常日頃注意をしているつもりなのだが。

「アスマー、何うなだれてんだよ。里はもう少しだろ、しゃきっとしようぜしゃきっと!」

当の本人に背中をぽんぽんと叩かれ何も言えなくなった・・。

「お前本当、里内でも行動慎めよ・・?これ以上誤解されたら肩身が狭くなる」
「ううん、確かに俺が皆に告白することで、俺が浮気者だと誤解される可能性は高いな」
(そっちじゃねぇよ!!)

親父さんも楽観的な方だったが、それ以上にこの息子は楽観的すぎるところがあって。
天才とバカは紙一重とは誰かが言ったもんだ・・・的を得ている。

「人間愛なのになあ。それ以上の恋愛感情とかは俺は何も求めてねえよ?
ただ皆と一緒にいて皆と平穏に暮らせれば俺は強い忍になんてならなくていいし。
恋愛とかに至っては親父とおふくろに認められるような嫁さんもらって、子供は一姫二太郎。
結婚生活ものほほんとやって次男を跡継ぎにしてから忍引退して日がな一日縁側で将棋指して、嫁さんの最期看取ってから俺も一緒に逝くのが夢だってアスマ知ってるだろ?」
「忍の言うことじゃねぇな」
「現実主義者って言ってくれよ」

たださあ、と
今度はいつになく真面目な顔で彼は言い出す。

「この時代がそうさせてはくれないんだよなあ。忍界大戦の可能性だってこれから先ないとは言い切れないし、
将来上忍になれば命の危機と隣あわせ任務ばんばかくるんだろ?くそめんどくせーって親父がもらしてたし。
いつか、皆だって戦場に出るんだ、きっと誰かが死にそうになることだってあるだろうし、先生だっていつ行方知れずになるかわかんねえ。
今こう話せるだけでも、木ノ葉の忍がすごく恵まれてるのはわかるし。
まだ平和な今だけは、この時間に甘えて、皆にも甘えてたいだけだ。
まあ、皆は俺が守るから絶対死なせはしねえけどな!
ここにいる全員の位置が未来でも変わらないように、めんどくせーけど一生懸命つとめる!それが俺の忍道だからな!」

どうよ?
にこ、と彼が改めて問えば皆頬を赤くして。


「「「し・・・シカマルーーーーー!!!」」」
「はっはっは!今日はお前ら素直だなあ」


抱きついてきた皆をぎゅうと抱きつき返した。



「・・・不思議な子だねえ本当に」
「ええ・・・まあ、変わってるけど・・・人の中心に立てる人物の素質は十分あるみたいね」
「はは、だろう!!俺の教え子だからな!!」
((アスマも性格感染り気味か・・・・))




本日も快晴也!
(男の身体と乙女の心、奈良シカマル本日も絶好調であります)


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