#+*Correct Direction






ほらほら、早くしないと戻れなくなる。

このままずっと、終わりのない夢の中?

一歩踏み出すと崩れる世界。

それとも…銀色の靴を鳴らして……。





Correct Direction





『閻魔大王なんて知るか!もう二度と顔見せんなアホ。二度と喋りかけて来ないでください。秘書も辞めますから』



鬼男君はそう告げて、何処かへ行ってしまった。
もうそれからずっと彼を見かけていない。







ナ ン テ ゙ ?

ナ ン テ ゙ コ ン ナ 事 ニ ナ ッ チ ャ ッ タ ノ ?

毎 日 一 緒 ニ 居 テ 、

今 マ テ ゙ コ ン ナ 風 ニ ナ ッ タ 事 ナ ン テ 無 カ ッ タ ノ ニ … 、 ト ゙ ウ シ テ ?



***




目が覚める。カーテン越しに見る、太陽の光を浴びた。
風が気持ちよくて、もう少しだけ寝ていたい気分。

気が付くと、隣に居るはずのぬくもりは今日も無い。

起き上がって、台所に鬼男君の姿を探す。
いつもは、コーヒーの匂いを漂わせて、「おはようございます。閻魔大王」と声を掛けてくれるのに、そんな姿はもう無い。


何処へ行ったの?


仕方なく仕事に行く。
職場に行けば居るだろう、そう思い行ってみたけど、何処にも鬼男くんの姿はない。

理由が、解らない。
何処に行っていしまったのか。
どうして何処にも居ないのか。
俺には何も分からなかった。

結局仕事をしても鬼男君は現れることは無かった。
(家に帰ったら、きっといつものようにふらっと現れるさ…。)

そう言い聞かせた。
だって鬼男君は何だかんだで俺には優しくしてくれるから。


***
「ただいマトリョーシカ!ねぇ!鬼男くん、どうして今日は仕事場に来なかったのー?もしかして溜まっ、―ってあれ?まだ帰って来て…ないの…か?」


部屋は出てった時のまま。
朝は陽の光で明るかったのに、夜になったら、ガラン、とした部屋。

俺は無我夢中で鬼男君の姿を家に捜した。
どこかに隠れているんじゃないか?

それは『考え』と言うよりは、『願い』だった。

家中の物を全てひっくり返して、色んな所を探しまわった。
家に居ないのなら、天国か、地獄。
果てしなく広い天国と地獄を徘徊しては彼を探す。

それでも彼は見つからなかった。


俺は目覚める度に存在を願った。
それでも現れることは無かった。
そんな日が、何日も続いた。


帰ると、誰も居ない。
そんな日々が不安になっていく。

段々耐えられなくなっていく、身体と心。
不安定で、モノに中(あた)る生活。
呼吸も鼓動も乱れて、どうしていいか解らないまま、その場に崩れて沢山涙を流す。



夜は長くて怖いから灯りをともして、鬼男君の帰りを待つ。
息を静かに整えて、帰ってきたら飛びつけるように、とソファーの上で横になりながら、指で涙の跡をなぞる。

深く目を瞑ると、まぶた裏に浮かぶ愛しい人の顔。
耳に聞こえるその声も愛しい人の声。

目を開けると、真っ暗な世界。
あんなに優しいキスを何度もしたのにその味も今は思い出せない。

孤独な夜が恐い。初めて感じた恐怖。


早く帰ってきて。

初めて知る。
俺は一人では駄目だと。


鬼男くんが居ないと、呼吸をすることさえ今は難しいのだと―。


***


「大王、…なんか元気ないですね?」


天国や地獄を徘徊しては色んな人に言われる。
その度に笑顔作って、「そんなこと無いぞ!」嘘を吐く毎日。

本当は辛くて、不安で、押し潰されそう。
でもそんな事誰に言えるんだ?
閻魔大王が、そんな事誰に言えるの?
嫌われ者の閻魔大王。


何も出来ない俺は、どうしたらいいのだろう。


帰るのが恐い。孤独しかない夜が恐い。
それでも頼れる場所なんか何処にも無くて。
だけども夜はやってくる。
だから涙の後を指でなぞって、待っている。
それでも彼は帰ってこない。

俺は『また』独りだ。


***

俺は昔から一人だった。
嫌われ者だった。

誰からも愛されることのない存在。

死者を裁き、生者に語り継がれるは恐ろしい『閻魔大王』の名。


『悪いことをしたら閻魔大王が地獄で食べるんだって』
『違うよ!針の山を登らせられるんだってよ』
『そうなの?僕はゆっくり身体を引き裂かれて食べられるって聞いたよ』


そんな話を語り継いでは決まって言われる台詞。


『うわー閻魔大王って怖い奴だなー。絶対逢いたくない!』


俺はいつも一人ぼっちで嫌われ者。
だから孤独には慣れていた。

彼が『秘書』としてやってくるまでは。


鬼男くんが秘書としてやってきて、変わったのは世界だった。
最初に表情が生まれた。
笑ったり、怒ったり、悲しんだり。
次に欲が生まれた。
遊んだり、欲しがったり。
そして感情が生まれた。
人を好きになるということ。愛するということ。


全て鬼男君が俺に与えてくれた物。
閻魔大王に近づいて、閻魔大王を慕ってくれた、唯一の愛し合えた人。

いつでも側にいてくれた、大事な人。


でも今は独り。また独り。
嫌われ者の閻魔大王。
闇の中で独り彷徨う。愛する者の影を見ながら。




独 リ ボ ッ チ ノ 閻 魔 大 王 。

嫌 ワ レ 者 ノ 閻 魔 大 王 。

ズ ッ ト コ ノ マ マ 孤 独 ノ 中 ヲ 彷 徨 ウ ノ 。

堕 チ テ イ ク 、 闇 ノ 中 。

本 当 ハ 知 ッ テ イ ル ン デ シ ョ ウ ?

彼 ハ 居 ナ イ 存 在 ダ ト 知 ッ テ イ ル ン デ シ ョ ウ ?

本 当 ハ 傍 ニ 居 ラ レ ナ イ ト 知 ッ テ イ タ ン デ シ ョ ウ ?





何度も何度もこだまする声。
くり返し聞こえる俺の頭の中で。

消えない声。

ウルサイ、ウルサイ。

その忌々しい声は、俺の声だった。


***


今日も目が覚める。朝だ。
目が覚める。カーテン越しに見る、太陽の光。
風が気持ちよくて、もう少しだけ寝ていたい気分。


「大王…、閻魔大王!」


聞き覚えのある怒鳴り声と愛しい人の姿。


「お、にお…く、ん…?」
「何ですか?いいから早く起きてください!仕事ですよ!」


少し機嫌の悪そうな声。喋り方。眉間にシワの寄る顔。
俺の高鳴る鼓動の音。あふれ出す気持ち。


「お帰り…、…おかえり、鬼男君ッ…!!!」


ギュっと抱きしめる。
何処にも行けないように。
腕の中に閉じ込める。
存在を確かめるように。


「あー!うぜぇ!!離れろ大王イ…カ…?…って大王、何泣いてるんですか?!」


少しビックリしている鬼男君は急に声色を変えた。
本気で心配してくれているみたいで、そわそわしていた。
鬼男くんには悪いと思っている。
それでも今は止められない。

涙が沢山流れる。つまらない孤独な日々を埋めるように。


「…長い、」
「はい?」
「長い夢をずっと見ていた気がしたんだ…、恐くて切ない夢だった…、」
「…どんな夢だったんですか?」


髪を撫でながら優しい声色で問う鬼男くん。
俺は鬼男くんの頬に手を当てて答える。


「んー、思い出せない…。鬼男くんの顔を見たら、忘れたみたい…」
「なんですか、ソレ、」


クスっと笑い合って、幸せを分かち合う。
そんな日々が毎日が、俺にとってはかけがえなくて、大事な音。

そんな日が毎日続けばいい。






長 イ 、 長 イ ア ノ 夢 ハ タ ダ ノ 夢 。

ホ ラ ホ ラ 、 早 ク シ ナ イ ト 戻 レ ナ ク ナ ル 。

コ ノ マ マ ズ ッ ト 、 終 ワ リ ノ ナ イ 夢 ノ 中 ?

一 歩 踏 ミ 出 ス ト 崩 レ ル 世 界 。

ソ レ ト モ … 銀 色 ノ 靴 ヲ 鳴 ラ シ テ … … 。


『オ ウ チ ガ イ チ ハ ゙ ン 。』


ソ ウ 唱 エ テ 、 正 シ イ 方 ヘ 。






[fin.]











@あとがき

最初に言っておきます。
訳がわからなくて、すいません!!
自分でもよくわかりません☆←
初めての天獄の作品なのに残念すぎるクオリティ_| ̄|○

・解説
閻魔と鬼男くん喧嘩→鬼男君疾走事件→閻魔待ってる→一向に帰って来ない鬼男くん→不安に駆られる閻魔→ついに閻魔精神が壊れ始める→追い打ちを掛けるかの様に、昔の記憶と自分の立場→精神と崩壊の狭間→鬼男くんの帰還→まさかの夢オチだったのーっ!?
って言う感じですかね。

実は昔描いた小説をアレンジした物です。
小説は気分で書くので、結構その時の出来事とかに影響されて完成してる物が殆どです。
何かあったんでしょうね(笑)
この時に。

多分ですが、
これ夢じゃないんじゃないかな、と個人的に思います。
いや、描いたときの自分に聞かないと分からないけど(笑)

鬼男くんのストーリーが別にあるんじゃないかなーと思います。
というかある!あってくれ!!私!!!
最後のフレーズが気になりますね。
多分これはあれですよ、鬼男君疾走事件の鍵です(笑)
あれかな、オズのナンチャラとアリスに影響されたときに作ったのかな…?


気が向いたら鬼男君バージョン作りたいと思います。(笑)



ここまで読んでいただきありがとうございました!






























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