愛おしいです、×××たい程 この世には2つの世界が同時に存在する。その2つの世界は鏡合わせのようなもの。 物質界と虚無界。 物質界には『祓魔師』 虚無界には『悪魔』 そして15年前。虚無界の神が産み堕とした2人の落胤が物質界を変えてゆく。 「強く…なりたいんです…!もう誰も死んで欲しくない……ッ…!!」 青年は強く叫んだ。夕暮れ時、闇と光が入り乱れ出来上がった紫色の狭間に向かって泣き叫んだ。 青年の『養父は青年の兄と悪魔によって殺められた。』と口々に囁かれた語弊。 しかし青年は、考える暇も無く、語弊を信じた。 何故なら青年の兄は『悪魔』なのだから。 青年は実の兄が『悪魔』だと言う事を知っていた。それも幼い頃から。養父に『兄の招待』を聞かされ、青年の道は肯定されたハズだった。 『…雪男、神父さんと一緒に戦わないか。闇に怯えて生きるより、強くなって人や兄さんを守りたくないか…?』 青年は養父の言葉通り、二年前から『祓魔師』になった 歴代再少年で『祓魔師』となった。 だけども青年は気がついてしまった。 養父の言う通り『祓魔師』になってしまった後に、この選択、この人生の肯定が『最善策では無い』事に。 「奥村先生…、どうされました?」 私は失望する青年に声を掛けた。勿論、青年の失望理由等は重々承知の上。 青年には隙があった。心に闇を隠し続けている。今も。昔も。 憎しみは憎悪となり、青年を蝕んでいた。 「フェレス卿…僕は……、『悪魔』…」 青年の言葉に私はなんとも愉快な気分になった。口の端が思わず歪んでしまう程。 興奮する気持ちを抑え、私は静かな口調で青年に言葉を添えた。 「そうですねぇ…、君は『 「………僕が、悪魔……」 「何を躊躇っているのです?君はもう『祓魔師』です」 ジリジリと青年を闇の淵へと追いやっていく様に言葉を掛ける。 『祓魔師』で有りながら、自分自身の招待は『悪魔』 その事実が飲み込めず、相変わらず『悪魔』に、そして『実の兄』に対する憎悪。 日を増すごとに、青年の心は闇に飲まれ始めている。 瞬間に、青年の耳は尖っており、瞬間に青年の歯は鋭い牙が生えている。 悪魔に飲まれ始めている…否、『悪魔』になりつつある『 「否定的ですよ? 「…否定……、僕は、…」 「君に残されたのは、皮を被り続けて『祓魔師』を続けるか、いっそ楽に 「…ッ……」 青年は苦しんだ。私のような者に耳など貸してしまうから、苦悩した。 萎んだ暗い毎日。自分の正体。自分の肯定された道。 何もかもが彼には苦しみだった。 私はそんな彼が哀れでしょうがなかった。 だから、落としたい。陥れたい。 何も怖いものなど無い。 素晴らしき世界を提供したい。 私は彼が欲しかった。何でも持っている私にもやっと欲しいものができたのだ。 「もう終わりにしましょう…さぞお辛いでしょう…?私が道を切り開いて差し上げることも出来ますよ…?」 私は手袋を外して青年の目を覆い隠した。 青年は静かに涙を流していた。 そんな青年に私は囁く。 「何も解らないなら、もういっそう 愛おしいです、×××たい程。 (もう全て無視をして、貴方は私だけ見ていればいいのです。) @あとがき 閲覧ありがとうございます。 某Pさんの曲からピピンときたので描いて見ました。 雪メフィを知ってからこの曲を聞くたびに書きたい書きたいと意欲が湧き出てきました。 楽しかったです。ありがとうございました。 ※ケータイからご閲覧されている方へ PC専用のタグを貼っている為、多少文法がおかしくなっている所が幾つかございます。 申し訳ございません。 back |