#届かぬ想い (#切ない話) 「太子、すいません。僕と別れてください!」 妹子がそう告げてから、半年。 私たちは恋仲を辞めた。 妹子には好きな女性(ヒト)が出来たそうだ。 摂政の私よりずっと素敵な女性だと言っていた。 届かぬ想い。 妹子と別れてから、毎日が詰まらなくなった。 何をしてても、気が晴れない。 妹子の事を一度足りとも考えなかった日なんて無い。 あんなに大好きだった。今もこんなに大好きで、忘れられない。 でも、仕方なかった。 妹子は私をもう好きじゃない。 私のわがままで大好きな妹子は困らせたくなかった。 私も何度も諦めようとした。 何度も何度も妹子を嫌いになろうとした。 でも、嫌いになれる場所なんてどこにも見当たらなかった。 本当に、愛してるんだ…。 「――さん、――さん、『太子!』」 「!!」 悲しみに打ち拉がれていると、遠くで声がした。 妹子に声が聞こえた。 私を呼んだような声。 声のした方を探しに行くと、妹子がいた。 でも一人じゃなかった。 木陰から二人が見える。 私を呼んだ声じゃなかった。 隣にいるのはきっと妹子の言った好きな人だ。 幸せそうに笑い合う二人。 どうして妹子はそんな笑うんだ…? 私と付き合っていた頃は、怒ったり怒鳴ったり…そんな表情しか見たことない。 どうしてなんだ…、妹子? 息が苦しくなった。 視界がグラグラした。 喉は熱くて張り裂けそうに痛くて。 悲しくなる。 好きだった。 今も好き。 大好きだ。 愛してる。 なんでそんな私じゃダメなんだ? 摂政でこんなにも偉いのに、何がダメだんだ?教えてくれよ、妹子。 どんなに心で叫んでも、答えは見つからない。 妹子の声も聞こえない…。 「妹子。…どうして、私じゃ、ダメなんだ…、こんなに好きなのに…妹子じゃないと、ダメなんだ…私は妹子じゃなきゃ…」 妹子と全く一緒の性格で、声で顔で。 そんな人が私を好きになってくれたらいいのに。 そんな人がいれば、私はこんなに妹子に執着しなくて済むのに…。 くだらない思いに、自分でも呆れて笑ってしまう。 そんな人がいるわけがない。 もし、いたとしても、きっと私は妹子が好きだ。 どんなに似てても、きっとソレは妹子じゃない。 「妹子…好きだ。すまない、まだ当分嫌いになれそうにないんだ…」 幸せそうな二人を背に、私は小さく呟いた。 [fin.] @あとがき 切な太子です。 小説というか、なんかほぼ語りじゃねーかよ! すいません。 なんかたまには切ない話を書いてみたくなりました…。 ここまで読んでいただきありがとうございます。 back |