#クローバーに願いを込めて。






四つ葉のクローバーは幸せを運んでくる。
それは迷信だ。






クローバーに願いを込めて。






妹子と一緒に見つけた四葉をパウチして栞にした。
お守りのように毎日肌身離さず持っている。

私は今その四つ葉の栞を手に持ち、森の中にある川岸にそっと座り込んで独り打ちひしがれていた。
今でも鮮明に思い出せる、この四つ葉を見つけた時の事を。
あの時の鼓動の速さ、音、妹子の声、言葉。
全て完璧に思い出せる。
(一字一句間違えずに思い出せる私は妹子がこんなに好きなんだな…)

付き合っていないわけじゃない。
相思相愛。
私も妹子を、想って結ばれた。
そんなはずだった。
だけど増えるのは憎愛ばかり。
妹子が憎いのか、私自身が憎いのか。それはもう分からなくなっている程。


「私ってものがありながら、竹中さんとか馬子さんとか、調子丸とかとイチャイチャ(仲良く)しやがって、チクショウ!ムカつく〜!」


私の虚しい独り言は、風に揺れる木々たちのざわめきで見事に掻き消えた。
それでも、私の胸の不快感は消えることはない。

四つ葉の栞を握っている手に思わず力が入る。

妹子だって、悪気があるわけじゃない。
それは理解しているつもりだ。だけど悔しかった。
とびきり五位スマイルで笑っている妹子の顔をさせるのがこの私じゃなくて、他の誰かだと言う事実が悔しくて、悲しい。

妹子のその笑顔を見る度に胸が痛む。
私じゃないと言う事実が胸に突き刺さる。
事実から離れようと何度も何度も真っ白になるようなセックスも、キスもした。
だけど、どんなに身体を重ねても、唇を重ねても、不快感は増すばかりで。想いは一方的な気がしていた。


「アホ、妹子…ッ……」


悔しさのあまりホロリと涙が頬を伝う。
喉の奥は熱く痛みを持つ。
一度溢れ出した涙は、しばらく止まることは無い。

ぐちゃぐちゃの視界で私は四つ葉の栞を見つめる。
やっぱり思い出されるのはあの日の私と妹子。
妹子は言っていた。






『四つ葉のクローバーは幸せを運んでくるんですよ。持っていると幸せになれるんです』







あの日の妹子に私は喉の痛みを堪えながら、小さくかすれた声で言ってやった。


「妹子の嘘つき」


そう言った後に何故か慌てて付け足した。


「…それでも私は妹子が、好きだ……。誰にでも何だかんだで優しくて、とてもイイ奴なんだ。『特別』だと、断定して贔屓(ひいき)したりしない。そんな所に惹かれた私が悪いんだ。…『それでも、いい』と私は思ったから、告白したし、今もこうして付き合ってる。だけど…やっぱり『特別な存在』には、なってみたい。自慢したいし、独占したい………、一回だけで、いいから………、」


誰が聞いてる訳じゃない。
それでも口が勝手に動き出して、声は出てくる。
だけど涙は止まらなくて、等々泣き崩れる始末。

悔しくて、悲しくて、恋焦がれてて、切なくて、儚い。
事実に嫉妬や、欲望が絡み渦巻いて、吐き出される本音。

何度も唇から零れ落ちる切ない声で儚い願いを零す。



「妹子が好き。私が一番になりたい。私だけが知ってる妹子でいい。私の妹子……」



この四つ葉に願いを吹きこむように……。





[fin.]






@あとがき
嫉妬にうずまく太子です。
続きかけたら描きたいな。と想っています。


ここまで読んでいただきありがとうございます!











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