「フレン、風呂空いたぜ?」
「ユ、ユッ、ユーリ」


ズボンの前を寛げてこれからフィニッシュに向かいティッシュを用意して準備万端でいるフレン。その部屋のドアの前に佇んでいるのは風呂上がりのユーリ。きょとんとした瞳が今のフレンには凶器に見えた。フレンにとって今までこれほど時間を巻き戻したいと思ったことはなかった。


軽く硬直しているフレンとこちらも首を傾げて動かないユーリ。その間に突然甲高い女の声が割り込んだ。


『あぁんそこっ、もっと…!』
「うわああぁっ」


ぶちっと慌ててテレビの電源を切るが時既に遅し。明らかにいかがわしい内容は伝わってしまっただろう。反応が怖くてフレンはユーリの方を向けない。


「…」
「…」
「…随分派手にやってますなぁ」
「…ご、ごめん」


ユーリもフレンも恥ずかしくなってぎこちなく言葉を紡ぐ。なにせ兄弟で性的な会話などしたことが無かったのだ。フレンは少しでも変な冗談や下ネタが出ると嫌そうに眉を潜めるから、まさか「フレンの初体験っていつ?」等とユーリが兄として聞いてみたい質問も絶対言い出せなかった。


こんな風にユーリにとってフレンは性欲とは無縁な存在だったので、フレンもちゃんと男なんだなと今更ながら変に感心してしまった。


「えっとその…お取り込み中悪かったな」


このまま見なかったふりをして立ち去れば良いのかとユーリは後退りをした。そこに想定外のフレンの言葉がかけられた。


「…ユーリもこういうの見るの?」


(え?こ、こういうのってAVの事だよな。フレンも何て事を聞くんだよ…。兄弟だからこういう会話も普通なのか…?)


「ま、まあ時には見るな」
「そう…じゃあ明日一瞬に見ないか?」
「べ、別に良いけど…」


兄弟で同じAVを見て抜くのは気まずくないのかとユーリは思ったのだが、フレンが提案したのだからフレン自身は気まずくないのだろう。だったらユーリに断る理由は無い。


「ユーリの好みは?リクエストに応えるよ」
「特に好みは無いけど…あんましアブノーマルなのは嫌だな」
「わかった。じゃあこっちで適当に用意するから明日の夜また来てくれ」
「ん、了解」


約束をして今度こそフレンの部屋を立ち去ったユーリは廊下でずるずるうずくまった。


「フレンとAV鑑賞会かよ…」


フレンとAVなんて似合わないにも程があるだろう。まさかフレンと一緒にAV見る機会が巡ってくるとは思ってもみなかった。


「…そりゃあAV見て興奮するフレンを見られるのはラッキーだけど、その原因が俺じゃなくて他の女っつーのはなんか複雑…」


ユーリは憂いを帯びた表情でため息をついた。そう、ユーリはひそかにフレンに恋をしていたのだ。残念ながら男で、しかも弟であるフレンにユーリが告白する勇気は無かったけれど。


「ま、今後のおかずが増えるだけでも良しとするか」


ユーリはもやもやした気持ちのまま自室へと帰った。




一方その頃のフレンはと言うと…。


「なんて大胆な事を…」


枕を抱えてごろごろ転がりながらさっきの自分を猛烈に褒めてやりたい気分に陥っていた。まあ確かにユーリに自慰を見られて恥ずかしかったし、ユーリの中でのフレンのイメージががらっと変わってしまったのは痛い。

だが開き直れば明日隣でAVを見るユーリが見られるチャンスを得たのだ。その場でユーリが自慰してくれないか、あわよくば互いのを触りっこする展開にならないか非常に楽しみである。


「それにしてもさっきのユーリ、可愛い…」


風呂上がりのまだ濡れた髪をうなじに張り付けきょとんとした目でこっちを見るユーリ。


「ユーリ…」


あんなに破壊的な可愛さを持ったユーリが自分の兄だからこそ同じ屋根の下に居る。ユーリは兄だから弟である自分が手を出してはいけない。そのジレンマの中フレンは今までずっと耐えて来たのだ。ここに来てのこの新展開がきたのだ。なんとしてでも活かさなくては。

その前に中断された行為を再開させるべくフレンは脳内で何度も先程の風呂上がりのユーリを再生しながら完全にズボンを下ろした。


「ふっ……ユーリ…っ…」


今日はもうあのAVを見る気にはなれなかった。AVの女性がいくら長髪で美人であってもやはりユーリの足元にすら及ばないと改めて思ったからだ。女性の裸体では無く服を着たままのユーリであってもフレンは十分興奮できる。


「ん…っ」


熱く硬くなった自身を擦りながらユーリのどの部分に白濁をかけたらいいだろうか妄想する。最初はあの綺麗な顔がいいかな。ユーリは嫌がりそうだが、屈辱に歪んだ顔に無理矢理かけるというのも悪く無いと思う。


行為に慣れてきたら一度くらいユーリにフェラしてもらいたい。小さい口いっぱいに突っ込んで懸命に奉仕するユーリを見たらあまりもたない気がする。苦しそうな声なんて出されたら理性が飛んで逆にもっと咥内を荒らしてしまいそうだ。もしそうやってイってしまっても、ユーリなら頼めば最後の一滴まで飲んでくれるだろう。

ああこのぬるぬるした自身を扱く手が白いユーリの手に変われば良いのに。


「はっ…も、でそ……うっ」


興奮が妄想をエスカレートさせてフレンは呆気なく果てた。




ティッシュで白濁を受け止めて慣れた手つきで処理した後、フレンはじっと壁を見つめた。フレンが見つめるその壁の先にユーリの部屋がある。脳内が落ち着いても考えるのはユーリの事ばかりだ。

一体今ユーリは何をしてるんだろう。フレンとの明日を少しぐらいは意識してくれているのか。


「僕は…本当に君の事が大好きなんだ、ユーリ」


ぽつりと呟いた言葉は壁を越えられずに室内へと落ちた。


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